けーはち

炎628のけーはちのレビュー・感想・評価

炎628(1985年製作の映画)
4.0
ナチス・ドイツがソ連時代のベラルーシで628もの村を焼く虐殺を描いた戦争映画。パルチザンに志願した少年兵が部隊から置き去られ、そのうちに故郷の村が焼かれ、紛れ込んだ先の村も襲撃され、深い怨恨を抱き復讐を──というだけの話だが、少年少女の人権を大事にする西側諸国ではありえないソ連の反戦映画ならではのエグい画が目白押し。決して直接のゴア描写が激しい訳ではなく、しばしばドキュメンタリーのようなカメラ目線で観る者に対して生々しい感情を投げかけてくる圧迫感のある画で、ナチスによる弾圧・略奪・凌辱・虐殺が祝祭のように嬉々と実行され、美少女が口に笛を突っ込まれた状態で太腿から鮮血を垂らしゾンビのようにヨタヨタ歩き、無邪気だった少年の髪が急激に白くなり肌に深い皺が刻まれる、漫画チックにすら思えるトラウマ表現。爆撃を受けた少年兵は耳が悪くなり、途中から耳鳴りのような残響の異音が轟くのも、もうほとんどホラーだ。

ボロ雑巾になった少年に銃を突きつけてナチス兵がキリッとした記念写真を撮るシーンも、パルチザンに追い詰められた兵士が裏切り命乞いする中でSS将校の「お前らアカを皆殺しにしてやる」という一貫して悪びれない態度も何気ない高潔さゆえにそこまでファシズムを信奉するという悪意がすごいし、主人公がヒトラーの肖像画に銃を撃ちまくり時間を巻き戻す(しかし当然ながら実際にはそんな事は出来ない)イメージを得るシーンも強烈。ペレストロイカの中で変わりゆくソ連が作った戦争映画の臨界点と言って過言ではない一本。