とある観光地で起きた通り魔事件、その裏にただならぬモノを直感的に感じ取った白石は、事件の唯一の生存者である江野（宇野祥平）に取材を始めるのだが・・・
白石晃士監督による超常現象ホラー。
なぜ？なんでこんなありえない事が起こるの？という事件が後を絶たない現代。
その現代の深い闇に切りこんだ本作は確かにラストまでの展開にゾッとさせられるのだが、その一方で「キ〇ガイ」と呼ばれる種類の人間のその心の歪のようなものを覗き込むような一種のワクワク感もある。
もちろん、それはこれがフェイクドキュメンタリーであるということが分かっているからなのだけど、まるで「ノンフィクション」を観ているような感覚でこの作品を『楽しん』で観ている自分自身に気づいてまたゾッとしてしまうのである。
何よりも宇野祥平演じる江野のキャラの不気味さがいい。
はじめはおとなしそうな被害者面から、事件に巻き込まれたことを運命だと、そして自分は選ばれた人間なのだと言い放つ高揚したあの話しっぷり。
『クズ』で『図々しい』という表現だけでは足りない胸糞悪さがこの作品の魅力の一つなのだと思う。
始終胡散臭いドキュメンタリー映像で、ブラックユーモアたっぷりなのに、白石監督をはじめ、黒沢清監督など出演者たちはしごく真面目、そこが『笑ってはいけない』的な楽しみ方が出来るわけだけど、
確実にキ〇ガイである江野の論理が、ある意味崩壊していないという事が一番ゾクっとしてしまう作品でした。
