ブタブタ

オカルトのブタブタのレビュー・感想・評価

オカルト(2008年製作の映画)
4.5
~『貞子vs伽揶子』公開前のおさらいを兼ねまして~

発端は通り魔殺人とその犯人・松木に奇妙な傷=紋様を背中に付けられた男「江野祥平(以下江野君)」を廻るドキュメント。

中盤はネカフェ難民で派遣労働者・江野君に密着の現代社会の問題を取り上げた『ザ・ノンフィクション』みたいになります(笑)

タバコや小銭を白石監督にたかる江野君。
派遣の仕事が決まってささやかなお祝いをしようと焼肉に皆で行くと上ミノ上カルビ上ロースetc…遠慮なく注文する江野君。
挙句酔って女性スタッフ(AD忍さん)に絡む江野君。

「刺されてウンコみたいだった人生が変わった」「奇跡が起きてる」とおかしな言動はあるものの至ってごく普通の何処にでもいる(?)男・江野君を追う形で進みますが徐々に日常が崩れて行く不安感と江野君の口から語られる「儀式」と称する恐るべき大量殺人計画=渋谷駅前交差点での爆弾による自爆テロ。

江野君の周りを飛び回るUFO。
『エル・トポ』で残酷殺戮シーンのバックにUFOが写ってると映画秘宝の記事で見たのですがUFOはおかしな人(ホドロフスキーとか)に寄ってくる習性でもあるのか??

派遣の仕事の帰り、「派遣リーダー」と言う男に理不尽な因縁をつけられる江野君。
「ちゃんとやれ!」「やってます」「俺がやってないって言ってるからやってないんだよ!」と、こういうイジメをする奴は何処にでもいます。
このあたりから江野君やっちまえ!と見てるコチラも江野君を応援し始めています。

爆弾製作の為の部品を奪おうと突然現れる「地獄だぞおじさん」と江野君の小競り合いはつまり、ダークサイドとライトサイドによる誰にも知られる事はなく近所で勃発したアーマゲドン。

「儀式」へと向かうタクシーの中での二人の会話。
白石「いいんだね?」
江野「うん」
白石「間違ってないんだね」
江野「全然間違ってないよ...」
何だか二人の愛の逃避行の様な(笑)
二人を怪しんでつけてきたAD忍さんがまるで二人の恋路を邪魔してるみたいに見えます。

黒沢清監督が本人役で登場しますが奇しくも『貞子vs伽揶子』と黒沢清監督の『クリーピー偽りの隣人』が間もなく同日公開されます。

『コワすぎ』『殺人ワークショップ』
『超・暴力人間』へと続く 【“江野祥平”誕生編 】とも言うべきエピソード。

『リング』の「呪いのビデオ」の中に登場する袋を被った「指差し男」は(モデルは殺人現場で袋を被って捜査員に指示を出す宮崎勤との事)地獄に堕ちた高山竜二らしいですが、あの「指差し男」はどうしても地獄に堕ちた江野祥平にも見えて来て『貞子vs伽揶子』が一体どうなるのか解りませんが江野祥平と貞子の邂逅はあるのか?
次なる江野祥平の登場は?
白石ユニバースの更なる広がりと江野祥平の活躍に期待します。
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