このレビューはネタバレを含みます
実話ベースの音楽ガーエー。こぅ閣下にオススメされて、確かに自分向けだと思い鑑賞。想像以上に地味でしたが、とても良い映画でした。タイトルの『ドリーミン・ワイルド』とは、主人公のドニーが組んでいたドニー&ジョー・エマーソンのアルバムタイトル。鑑賞後はエマーソン兄弟を聴いて帰りたくなりましたが、今回もジョン・サイクス聴いて帰りましたね。そんなに思い入れがあるミュージシャンじゃないけど、まさかこんなにジョン・サイクス好きになるとは。
2011年、音楽マニアの間でとある昔のアルバムがバズっていた。それは、79年に兄弟デュオ、ドニー&ジョー・エマーソンの『ドリーミン・ワイルド』。レコード会社の人がこのアルバムをリイシューするためにアメリカのど田舎に住んでいる兄弟やその家族を訪ねました。ドラマーの兄貴、ジョーや2人の両親は大喜びですが、ギター・ヴォーカルだった弟のドニーは浮かない顔をしています。やがて物語が進むうちにその理由が明らかになる…という話。
本作はドニーの内面にフォーカスされていました。ドニーの苦悩、そしてその乗り越えが描かれたガーエーです。ドニーの苦悩は大きく分けると2つ。
一つは、両親への罪悪感。ドリーミン・ワイルドをリリース後、ドニーはソロデビューしました。しかし、それには資金が必要で、父親が結構ドニーにカネをかけたんですね。持っていた農場を売ったりして資金繰りしていたわけです。しかし、ドニーは成功せず、結局地元に戻りスタジオ経営しながら生活してます。つまり、カネはみなムダになったわけです。父親自身は愛情があるから気にしていないけど、ドニーは気にしている。普通、気にしますよ。
もうひとつは、現役ミュージシャンとしての自負。ドニーは妻と今も現役で音楽活動しています。しかし、まったく評価はされていない。そのような中で30年前のアルバムが評価されても、ドニーとしては複雑なわけです。「今の俺じゃなくて、昔の俺かよ」と。しかも、若い頃の自分はオヤジのカネを溶かしているから、余計わだかまりがあるんですよ。
とはいえ、やっぱり評価されるのはまったくイヤなわけではない。だから複雑です。で、実際にアニキとスタジオに入ると、アニキは元々才能無い上にブランクがあるからオカズでもたったりして、ドニーとしては苛立つんですよ。
そんなドニーが現状とか、複雑な気持ちとかを受け入れて折り合いをつける話ですが、話自体は見るべきところはなくて、なんというかドラマはあんまり無いんですよ。見方を変えると単にずーっとドニーがモヤモヤと悩んでるだけの映画です。せっかくやったリバイバルライブとかもキレたりして、ドニーのフラストレーションが悶々と描かれる。
で、乗り越えですが、周囲の人たちがみんな優しくていい人なんです。だから、ドニーも胸の内を語ってもみんな受け入れてくれるから、ドニーも自然乗り越えていくんですよ。周囲の人たちがはじめからいい人なんで、物語の展開が30分くらいで読めるし、このオチ以外はないな、みたいな流れで進んでいくので、ネタバレ映画を観ている心境でした。
それでも良かったと言えるのは、やはり周囲の人たちの愛情に説得力があったからなんですよ。父親はドニーが音楽活動をしていて、そしてまたアニキとバンドをやることを心から喜んでいるし、アニキもどうやら複雑な背景がありつつも自分の人生を肯定し、ドニーの気持ちを受け止めます。特にこの2人の実在感が良かったんですよ。まぁ実話ベースだからホントにこんな人たちなんでしょうね。なのでエマーソン家の人たちの姿勢にグッときました。
ドニーって栄光なき天才って感じながらも、後々評価されたわけですし、本作で描かれているドニーの苦悩は割と共感しづらいのでは、と思います。過去作品が評価されたら「ヒャッハー!」じゃねえの?とか俺っちは思っちゃったね。昔やっていたパンクバンドの音源が評価されたら万々歳ですからね!実際は流通されてないから評価もクソも無いけどさ。
物語も地味で、ストーリーもまぁありきたりですが、それでも良作なのは上述したような大きな愛が説得力を持って描かれていだからだと思いました。ラストにリアルのドニー&ジョー・エマーソン(+ドニーの妻)のライブが流れました。それもなんだかホッコリしましたね。
https://youtu.be/ONIJXHvoynw?feature=shared
Donnie & Joe Emerson / Baby
兄弟デュオの代表ナンバー。79年の曲なんですが、なんか90年代以降のローファイ感というか、インディ・ロック感があるんですよ。しかも、そこはかとないネオ・ソウルっぽさもあり、時代を超越したカルトナンバーという印象です。ずっと同じメロディのリフレインもなんかミニマル・ミュージックって感じですし、15年くらい最先端だった気がします。フレーミングリップスとかヨラテンゴとか聴いてる音楽オタが喜びそうな曲で、マニアの中でバズったのもわかります。
ただ、俺はジョン・サイクスの方が好きだけどね!