MasaichiYaguchi

ぼくは君たちを憎まないことにしたのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
2015年のパリ同時多発テロ事件で最愛の妻を失ったアントワーヌ・レリスが、事件発生から2週間の出来事を綴った世界的ベストセラーを映画化した本作は、戦争が各地で起こり、掛け替えのない人々が失われるニュースが日常化したこの頃、憎しみによる報復は負の連鎖しか生まないことを痛感させる。
2015年11月13日の朝、ジャーナリストのアントワーヌと幼い息子メルヴィルは、仕事へ急ぐ妻エレーヌを送り出す。
しかしその夜、パリで多数の犠牲者を出すテロ事件が発生し、エレーヌも命を落としてしまう。
アントワーヌは誰とも悲しみを共有出来ない苦しみと今後の育児への不安をはね除けるように、妻の命を奪ったテロリストへ向けてメッセージを書き始める。
一晩で20万人以上がシェアした彼の「憎しみを贈らない」宣言は、やがて動揺していたパリの人々を落ち着かせ、テロに屈しない団結力を生み出していく。
最愛の人を予想だにしないタイミングで失った時、人はその事実をどう受け入れ、どう行動するのか?
憎しみが私たちに大きな傷を負わせないとも限らない今、本作は、私たちの愛は、この世界に存在する憎しみより強いということを、繊細にエモーショナルに描き出す。