ある日突然最愛の人(妻)を奪われたら、私はこのような言葉が言えたり、手紙が書けるであろうか。
これからも共に続くであろう生活を一瞬にして奪われて、どのように生活してゆこうかとまずは思うであろう。さらに1歳の息子の面倒を見なければならないとなると大変な出来事であり動揺は隠し切れない。
「憎しみを贈らない」この宣言は、テロリストによる暴力行為は断じて許されることではないが、この主人公の手紙から、不安定な社会だからこそ、パリ市民の心にも響いたのかもしれない。この映画が実話であったということにも驚きを覚える。
日本国内においても無差別殺人、予期せぬ高齢者の運転による交通事故など、悲しい出来事は数多くある。被害者救済の法律改正なども必要な気がする。国会議員の皆さんがんばってくださいよ。
しかし残された家族はその後も変わらず生き続けなければならないのである。罪を憎み人を憎まずが自分にできるかといえば自信がない。感情を持った人間であるがため犯人または加害者を責めるであろう。
嫉妬や軽蔑そして差別の絶えない、ある面では憎しみに満ちたこの現代社会において、勇気と希望を持って明日に向かって歩むことの現実は厳しいと痛感した。
この映画における主人公の被害者としての葛藤と赤ん坊の子役の熱演にも心打たれた。最期の場面から1歳の息子と父親が、これからの人生が気にかかる余韻を残す良い作品であった。