くろきつ

ぼくは君たちを憎まないことにしたのくろきつのレビュー・感想・評価

5.0
パリで起きた同時多発テロによって最愛の妻を失った男が苦しみながらも大切な息子と共に生きていく姿を描いた人間ドラマ。

愛する人を失った悲しみはそう簡単には癒えることはない。これからの人生をその悲しみで押し潰されそうになりながら生きなければならない。自死を考えることもある。逃げ出してしまいたくなることもある。しかしアントワーヌは息子のために生きる。大切な息子のために、そして愛する妻のために生き続ける。アントワーヌの悲しみがハリウッド映画のように何かをきっかけにすっと軽くなってくれたらどれほどいいか。現実はそんなものじゃなかった。永遠に悲しみ続ける。それでも生きるアントワーヌの姿に感動した。アントワーヌの妻を想う気持ちや息子を想う気持ちに心が苦しくなった。ぼくは君たちを憎まないことにした。本当はものすごく憎い。怒りが爆発しそうだ。でもそんなことをむき出しにしては息子もそんな人間になってしまう。だから、アントワーヌは手紙に綴った。「ぼくは君たちを憎まないことにした」と。
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