ShojiIkura

52ヘルツのクジラたちのShojiIkuraのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
3.7
 現代の日本に、確実に存在する虐げられた人たちの、他人に届かない「助けて」の声を、他のクジラには聞き取れない52ヘルツの音域で鳴くクジラの孤独に例えている。しかし結論としては、そんなことないよ、クジラとは違ってあなた達の声は届くよ、という話だったよな…と断言まではできないけど、そういう作品だったと僕は受け止めた。
 トランスジェンダーやヤングケアラー、被虐待体験の当事者が監修に加わっていることからも、このひどい出来事がすべて現実であることを、僕たちは受け止めなければならない。ただ、いつも思うのは、こういう子たちを施設に預けることを否定的に捉えられてしまうこと。「そういう」施設で働く僕としては、安心して預けてほしい。あなた達はその後心の支えになってくれればいいから。
 子どもに介護のみならず依存する親に、子どもに前夫を重ねて「ムシ」と言う親(でも名前に愛と書いていとしとつけている)。彼女らには彼女らのドラマがある。世の中単純じゃない、めんどくさい。だからと言って目をそらすのはやめよう。そうすれば彼らの声は聞こえる。
ShojiIkura

ShojiIkura