このレビューはネタバレを含みます
2021年の本屋大賞を受賞した町田そのこの原作小説は未読です。心に傷を持つ主人公の貴瑚を繊細に演じる杉咲花の演技力は見応えがあります。こういう役が多い印象ですが、ハマり役なんでしょうね。安吾を演じる志尊淳の静かで穏やかな演技も光っていました。ボロボロ状態の貴瑚に偶然再会した友達、美晴はとても親身になって接していて、親友で境遇が似ていたとはいえ何か訳がありそうで、バックボーンが知りたくなりました。最初、少年が長髪だったのは親に切ってもらえなくて無精に伸びてしまったものかと思っていましたが、途中でその理由が判明した時は切なくて心が痛みました。子どもに対する母親の虐待、ヤングケアラーの介護問題などリアルな社会問題を織り交ぜて全体的に重い雰囲気の作品でしたが、最後の天の雲の隙間から海に降り注ぐ幾筋の陽の光や地元の人達の温かい気持ちに見守られるようなラストシーンに救われました。