資源不足による政情不安で市民が虐げられる近未来のスペイン。娘を殺害されたことを悔いる身重の母で、夫の算段でアイルランドに亡命を目論むミア。ところが道中で夫と別れた上に軍に発見されたために自分以外は虐殺。気付けば暴風雨でコンテナごと荒れる海に放り出された彼女が繰り広げる決死のサバイバルを描いたスリラー映画です。
スペインはカタルーニャの映画学校を卒業して2008年より監督として活動するアルバート・ピントが、インディアナ・リスタのディストピア小説を映画化した2023年公開の作品で、批評家からの評価は賛否両論に分かれるもののNetflixで公開されると視聴数12週連続トップ10入りの快挙を果たして2023年の非英語作品最高の視聴数を稼ぎました。
ディストピアとしての作り込みには難があり、あまり掘り下げることなくサバイバル・スリラーへジャンルを変えます。それもシチュエーション上仕方なしとはいえ偶然頼りな面はありますが、斬新なコンテナごと放り出される設定とアンナ・カスティージョの熱演、ローカル映画ながら盛り上げ所を分かった演出で臨場感を維持する一作です。