ノラネコの呑んで観るシネマ

アイアンクローのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.6
かつてプロレス界を席巻した、フォン・エリック一家の物語。
プロレスブームの時代に育ったので、彼らのことは当然知ってる。
オヤジの鉄の爪フリッツ・フォン・エリックと、最強の息子たち。
しかしその栄光の裏側で、こんなことになってたとは。
ある意味で、これはホラーより怖い。
生まれた時から、レスラーとしての人生を運命付けられた四人の兄弟。
最初に頭角を現した、次男ケビンが物語の軸となる。
演じるザック・エフロンがものすごい体を作っていて、ビジュアル的な説得力抜群。
他の兄弟も、ちゃんと皆レスラーに見えるのが凄い。
レスラーとしての人生は順風満帆、だがフォン・エリック家は呪われていると皆んなが信じていて、その通りに不幸が次々と降りかかってくる。
ケビンなんて、生まれてきた子供の苗字を変えるくらいだからガチだ。
まあこれは静かに圧の強い毒親のオヤジと、運命から逃れられないと思い込んでいる息子たちの悲劇だな。
この親子たち、どっかで見たことあると思ったが、完全に星一徹と飛雄馬のアメリカ版だった。
レスラーとしての生き方しか知らず、肉体とは逆にメンタルは鍛えられてない。
なので一度挫折すると、皆自ら壊れてゆく。
ショーン・ダーキンって何撮った人?と思ったら「マーサ、あるいはマーシー・メイ」か。
あれも静かなムードの中で、不幸が忍び寄ってくる話だった。
プロレス映画というか、“アメリカの家族”を描いた映画の秀作。