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アイアンクローのプライのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.7
父と子供たちがチャンピオンとして栄光を手にする傍ら、多くの不幸に直面して「呪われたプロレス一家」と呼ばれたフォン・エリック家の実話を描いたヒューマン・ドラマ。

呪われた家族というより、家族という呪いに縛られ、さらには醸成させてしまった栄光の呪いを真面目に受け取ってしまった家族の物語である。劇中で起きる不幸の数々は、どう見ても呪いと称した偶然ではなく、肉体や精神が消耗したことによる必然。父の言う事を守ろうとし、試合に勝利することに固執し、精神へ大幅に負荷がかかっていたことが見て取れる。メディアやコンテンツで華やかな界隈として祭り上げられるスポーツ界のリアルを突き刺す。一家の家長である父親による厳しい英才教育という設定を通じてスポーツ界のリアルを届けるのは『ドリームプラン』と同じであり、『ドリームプラン』がなんとか栄光を握りしめ続けられたベスト・バージョンとするなら、本作は栄光の代償を取り立てられるバッド・バージョンに近い。鑑賞者のスポーツ界の見方を変える作品。

本作は、世代員の男性全員がプロレスをする家族の物語ではあるけれど、学校に存在するブラック部活動の実態に近い。正確に言うと、「自称・スポーツ強豪校」かも。父フリッツが顧問の先生で息子たちを部員に見立てると、そう見えてくる。肉体的および精神的に厳しいことや試合で勝利することを課すだけ課して、身体の状態や将来(部活動で言うなら、部員の進学先や就職先の面倒を見ること)を全くケアしない点はフォン・エリック家もブラック部活動も同じである。


⭐評価
脚本・ストーリー:⭐⭐⭐⭐⭐
演出・映像   :⭐⭐⭐⭐
登場人物・演技 :⭐⭐⭐⭐⭐
設定・世界観  :⭐⭐⭐⭐
星の総数    :計18個
プライ

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