故ラチェットスタンク

レザボア・ドッグス デジタルリマスター版の故ラチェットスタンクのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

『貯水池の犬たち』

 劇場で数年ぶりに再鑑賞。とても良かった。ぶっちゃけ映画としては中盤あたりから破綻してくんだけどアバン〜ブロンド登場まではすごく綺麗。時系列のシャッフルでダレ場を無くしつつ、その一つ一つが人物の紹介になってる。各々のキャラクターの特性がケミストリーを起こしながら会話が展開されるので飽きない。

 オチまで分かった状態で見るので各人の行動の意図がよりクリアに見渡せた。正直「誰が犬か」の謎が割れてから長いし、しれーっと明かされてしまうので、そういうサスペンスとしてはヘニョヘニョ。ただ粗っぽさがありつつのちに続くエッセンスが特濃なので不手際さよりチャーミングさが勝つ。

 拷問シーンは久々に見たけどあんなに完璧なシーンだとは思わなかった。ラジオ局の紹介を始めるところからして「あ、スイッチ入った」と思うが、愉快に踊りながら近づくのもそうだし、外に出て音楽が切れるタイミング、あの静寂とかも、ハイライトだなあと。つくづく劇場で拝見できて良かった。大学の友人と観たが捕まった警官がアッサリと殺されてしまうくだりで「ぇぉわあ」みたいな声をあげていて自分も初鑑賞時に引き戻されるようだった。一緒に観て良かった。

 ニッチなとこで好きなのはブロンドを撃ったあとにオレンジが弾切れした銃を向け直す仕草。ジリジリとカメラが動いてブロンドを捉えると「まだ死んでないんかい!」という。遡及的にオレンジの仕草の意味がわかる。

 雑談はちゃんと聴いておこうと思ったけど普通に何箇所かは目が滑った。冒頭の『ライク・ア・バージン』のくだり(とチップのくだり)はとても良かった。(それでも目が滑ったけど。)タランティーノ作品で聞き入ってしまう雑談には信条・価値付け・サスペンス、みたいな感じで何かしらの条件がありそうだと思うが、この辺を踏まえて『パルプ・フィクション』を見直したい。

 ちなみに友人は「人が沢山死んで悲しかった。」と言っていて、それは本当にそうだった。