故ラチェットスタンク

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3.3
『蛇頭竜尾』

静止した静寂な漫画の映像化の難儀さを身をもって知らされた。1〜3巻辺りの内容をまとめた部分は全体的に苦しい。浅野いにおの、『デデデデ』の「終わってくれない日常」「それに甘んじる私たち」の間を起こすにはややテンプレートなアニメ演出過ぎる会話・芝居が続く。リアルな背景からキャラクターが遊離し、巨大なオブジェクトの抑圧感(と両義的に感じる解放感)もビタイチ感ぜられず。日常の自堕落感、静止した画面での雄弁な語りは主張の強い音楽にかき消される。しかし、後半にかけての回想パートでの演出の爆走は凄まじい。画角を活かしたレイアウト、華麗な撮影、サスペンスを押し上げる色彩と音楽、人物の溶け込んだ背景などなどアニメとしてのエレメントが全部パーフェクト。尺の中で「正義の暴走と後の祭り」を描くための諸々の取捨選択も秀逸だ。全体的にもう少し演出にムラなく、各シーケンスが綺麗に編集されていればもっと良かったな…など無い物ねだりは尽きないが、規格に対してのクオリティとしては十分に満足。後編はほぼ負け戦確定してしまってないかな…とも思いますが、キチンと劇場で見届けさせていただきます…。