不乱苦

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章の不乱苦のレビュー・感想・評価

5.0
原作未読。

宇宙からの侵略者によって滅亡の危機を迎える地球で、恋に友情に毎日を生きる少女たちを描くSF+日常系+セカイ系アニメ。この一見奇抜な組み合わせが、生々しく現実を抉り出しているのだからすごい。

東京上空に巨大な宇宙船が浮かんでいるが、彼女たちはそれとは関係ないかのようにわたしたちと何も変わらない日常を送っている。街中は看板だらけでファミレスも営業中。今このリアリティを考えることは非常に重要である。戦争をしている国にも、このような日常があるのだ。

陰謀論、プロ市民、街頭デモ……と、日本のリベラルたちが血道をあげていることを、実に醜悪に見えるよう表現している。何せ、それに関わる人物はヒステリックな「毒親」にしか見えないのだ。

「希望は、戦争」とはもはや古い言葉になるが、地球滅亡を間近にしても、子供は学校に通い、いじめに遭い、心を病む。ここまで強固に変わらない社会の絶望感が劇中にみなぎっている。

絵はコミカルでディフォルメされているが、語られていることは全て生々しく、胸が痛む。

アニメーションのクオリティは文句なし。CG含め演出も良い。かわいい少女たちとドタバタギャグも満載で楽しい。欠点を探そうと思えば見つかるのかもしれないが、作品の魅力と涙で視界がぼけてよくわからない。
正直、激惚れしてしまった。5月の後章が今から楽しみ。

そうそう、欠点と言えば思い出したが、ちょっとモヤモヤしたのは、「侵略者」は何もせず、ただただ人間側が攻撃を仕掛け、そのとばっちりで人間にも犠牲者が出ていること。ここはちょっとテンプレ的な気がする。言いたいことはわかるが、他と比べてリアリティ表現がちょっと古い。「一番怖いのは、人間なのかもしれない」系は、もういいかな。

いやしかしそれを言ったら門出が闇落ちする展開もテンプレ的か……。
不乱苦

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