耶馬英彦

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章の耶馬英彦のレビュー・感想・評価

4.0
 前編で暴走したカドデがどのように収拾したのか、その訳が明らかになる。かなりSF寄りの設定だが、理解はできる。カドデとオンタンの人格が劇的に変化したのかと思っていたが、そうではなかったという話だ。考えてみれば、人間の世界観は変化していくが、人格はそう簡単には変わらない。

 前編で登場しなかった人物が何人も登場するが、話はカドデとオンタンを中心に展開するから、散らかっている雰囲気はなく、人生の広がりを感じさせる。登場する政治家、活動家、部活の先輩、LGBT、それに元侵略者は、ふたりの世界観が広がっていくのを助ける役割を担っていると思う。

 人類の暴力性を冷徹に描いている作品で、それはとりも直さず人類の愚かさの表現でもある。共同体を司る大人たちも、かつてカドデの読み順を替えていじめていた小学校や中学校のいじめっ子たちと同じレベルなのだ。文明は軍事技術を先頭に発達してきたが、人類の精神性は文明の発展に追いついていない。子供に銃や爆弾を持たせるようなものだ。自分だけよければ、いまだけよければ、それでいい。そういう指導者たちと、そんな連中に投票する有権者に対する痛烈な批判でもあると思う。

 とても面白かった。
耶馬英彦

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