netfilms

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.5
 残念ながら前篇を観ても私の中では永遠に原作未読なのだが、高校時代を描いた前篇よりも大学時代を描いた後篇の方が登場人物やエピソードが羅列的に多く、セカイは確実に崩壊に向かうにも関わらず、何かダイジェスト映像を観ている気分になった。前篇における「かどで」と「おんたん」の濃密な時間の多幸感は今作にはない。というか登場人物だけが無駄に拡がるものだから、「かどで」と「おんたん」の幸福な関係もその分だけ間延びし、横に永遠に延び続ける。おそらく今作の作家さんは真面目で律儀な人で、登場人物たちを出来るだけ等価に演出したいという目論見があるのだろうが、どう考えてもそれは無理がある。前篇120分、後篇120分という分量での勝負は昨今の後篇だけが長くなる企てと比べれば大変に潔い。潔いのだがそれならば前篇で大学まで進学させてしまえば良かった。踏み込めば良かったのだが、それならば前篇における「かどで」と「おんたん」の濃密な時間の多幸感も出なかったはずだ。

 ただ前篇で太字で描き楔を打つべきだったのは栗原キホを失った小比類巻の行動であり、渡良瀬や大葉圭太の動向であろう。世界がセカイとして破滅に向かう際には吊り橋現象として必ず、主人公の前にボーイ・ミーツ・ガールな異性が現れるが今作も例外ではない。また前作以上にクローズ・アップされる竹本ふたばと田井沼マコトの関係性は若者たちのライオットに期待している面すら感じられる。イソべやん激似の首相の機能不全ぶりというか我が国の機能不全ぶりが取り沙汰されるばかりで、国家がダメなら個が打開して行くほかないというスタジオ・ジブリ的な少年少女の世界のあと、あらためて大場君とおんたんが並行世界からの住人=選ばれた人であると説明する今作のプロットの凡庸さはガチ勢にとってアリなのかナシなのかを問いたい。鈍感なエピソードの羅列と崩壊する国家との類まれなるバランスの中に薄皮一枚の日常があった前篇とは対照的に、今作は風呂敷の拡げ方を間違えてしまったように思えてならない。
netfilms

netfilms