ふじたけ

熱のあとにのふじたけのレビュー・感想・評価

熱のあとに(2023年製作の映画)
1.0
 あの事件を知っている人からしたら、血まみれでタバコを吹かして階段を下るオープニングショットはわざとらしさしかないし、それに続いて笑う橋本愛がスプリンクラーで濡らされるありきたりな描写を見て嫌な予感がしたが、それは全く正しかった。出てくる登場人物は現実にいそうもない人間だが、twitterに上げられたような安っぽい言葉をベラベラと喋るという意味ではどこにでもいる人間である。時折話す意味ありげなエピソードも、登場人物の現実感を損うだけで、全く響かない。台詞も行動も全部作為的で唐突なため、理解できないし、無理矢理作者の考えを押し付けてるだけだ。理解できないだけでも、その奥に何か真実が感じられる場合もあるが、それは当然ない。映画は言葉で考えるためのものではない。スクリーンの登場人物は、監督の手で演技をさせられることに抗い、自分なりの真実をもって自由に躍動するものであるべきだ。
 真っ暗な部屋に閉じ込められ、愛という言葉がふんだんに盛られたお経を聞かされる地獄の映画。

 
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