Kaz66

熱のあとにのKaz66のレビュー・感想・評価

熱のあとに(2023年製作の映画)
3.7
2019年に現実に起きた「新宿ホスト殺人未遂事件」にインスパイアされた、観る者の視点により色んな「愛」が錯綜する鮮烈かつ難解?な物語。
製作スタッフは東京藝術大学院の同級生で、黒沢清に師事しまだ長編2作ながら世界からも注目を集める新鋭:山本英監督と、韓国中央大学演劇学科卒で藝大院で坂元裕二に師事した脚本:イ・ナウォン。
その2人の感性を上手く作品にするのは、「寝ても覚めても」「ドライブ・マイ・カー」のプロデューサー:山本晃久。というとても“アーティー”な組み合わせで、理念が激突する思弁的な恋愛映画が生まれた。
「幸福」vs「愛」の間で、怖いほど潔癖な殉教者の如く自らの「愛」を貫く沙苗役に橋本愛(「桐島、部活やめるってよ」「あまちゃん」)。
沙苗を「幸福」にしたいと思った健太役に仲野太賀(「すばらしき世界」「笑いのカタブツ」)。
沙苗の愛したホスト隼人との間に「幸福」を育みつつあったよしこ役に木竜麻生(「わたし達はとおな」「福田村事件」)。
この3人を中心に、坂井真紀/木野花/鳴海唯/水上恒司などの実力派共演陣が脇を固める。
ひとつひとつのショット、表情、台詞が、自らが信じる“愛”を彩り、その理念に溺れ、愛の概念を覆していく…。
とても哲学的な作品でした。
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