Sasada

恋するプリテンダーのSasadaのレビュー・感想・評価

恋するプリテンダー(2023年製作の映画)
4.1
今年の最優秀助演アニマルは今作か“落下の解剖学”で、最優秀エンドロールは絶対今作。隙のないラブコメで最高でした。

恋人のふりをしているうちに好きになるのではなく、恋人のふりをしているうちに隙間から本当が漏れてゆくわけで、虚と実の合間に現れるそれがスリリング。
誰かに見せることを前提とした「演技」によって周囲がベンとビーをくっつけようとすると、意図する方にもしない方にもコミュニケーションは弾ける。他者との関わりを丁寧に織り込み、みんなのことが好きになる映画だったなと。

下ネタも含めたコメディだけれど、ベンはケツがどうとか胸がどうとかそういうのには全く乗らず何なら諌めるので、観た人がヒヤッとしたりモヤっとしたりすることなく楽しめるのも良い。安心して笑えるって普通にむずいことをやってる。

他人や社会によって作られた「理想」を捨てたとき、何が辛くて何が怖いかを彼らは語り、相互に手を差し伸べる。自分の心に何が/誰が浮かぶかを認識し、これからどう生きるかを決めるまでの話でもあって、ラブとコメディだけにとどまらない普遍性も獲得している。
Sasada

Sasada