ハンスウ

ビニールハウスのハンスウのレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
4.5
韓国の映画学校の若い新人監督の長編デビュー作品で、日本では大阪の映画祭で上映して終わり、あとは配信で出回るっていうパターンの作品を何本か観たことありますけど、どれもこれもそれなりに佳作、秀作でしたよ。今作も同じ学校の新人監督のデビュー作ですけど、これは曲がりなりにも日本で一般公開されてるんですよね。日本での扱いが今までの新人と明らかに違う。今までの新人といったいどう違うのかっていうその理由はこの作品を観終わってすぐにわかりましたぁぁぁぁ!

あらすじにざっと書いてある、おばちゃんがビニールハウスに住んでて、介護の仕事をしていると、ああ、これは貧困の話だろうなあ、そういうヒューマンドラマを監督はまじめに演出したんだろうなあ、って勝手に想像してました。貧困、老い、介護っていうの、ありがちだからね。しかし、これはただ事じゃなかったですね、ただのヒューマンドラマではなかったんです。いや、途中まではわたしはヒューマンドラマとして観てましたよ。でもなんか緊張感がハンパないんですよ。観てる間ずっと緊張しっぱなしでした。まるでアスガー・ファルハディの映画を観ているみたいでした。これはいったいなんだろうと思いましたねぇ。

でも、わたしが勝手にヒューマンドラマだと思ってたこの映画はときおりスリラーのように演出されているシーンがチョコチョコあるんですよね。おや?って思ったんですけど、また介護のシーンでヒューマンドラマに戻るんです。介護ったって誰にでもできる仕事じゃないよなぁ〜なんて思いながら眺めてましたけど、すぐに緊張が走ります……ああ、やっぱ、これはヒューマンドラマなんかじゃないなぁ、って確信に変わりました。中盤から後半にかけてはもうあからさまにサスペンスの演出で観客をビビらせにきてます……

新人だけに脚本は荒削りでちょっとやりすぎな感じもありますよ。しかし、そのやりすぎ感は観ていてちょっと快感すら覚えましたね。中途ハンパにおさえてしまうより出てくるものを惜しみなくさらけ出したような脚本じゃないでしょうか。そこにとても好感が持てました。とにかくビックリさせられました。今のところわたしは今年No. 1の映画です。
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