Stella

陪審員2番のStellaのネタバレレビュー・内容・結末

陪審員2番(2024年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

怖い。斬新な設定。陪審員ものの映画をいくつか観てきたけれど、これはびっくり。開廷して、事件の内容を聞きながら、記憶の場面と行き来するカットがとてもよかった。うまい。そして、これもパキパキと時間をかけず予算内で作ったのだろうと想像していた。

内容の感想。これで彼が罪に問われたとして終身刑になった人は釈放されるのかな。彼の有罪が確定されれば釈放だったか?州によって法律が違うからよくわからない。
陪審員制度は感情で決められる可能性が高いから、民主的システムだとは思っていない。本作でも、犯人だと決めつけている人たちは、「その殺人」をしたかどうかを考えなきゃいけないのに、「この人」に罰を与えるために有罪だと言っていた。陪審員として絶対してはいけない考え方。そして、有罪を証明するのが検察で、そこに少しでも疑いがあるなら無罪にしなくてはいけない。それが裁判制度の根幹。それを忘れている人は、陪審員になる前から不適格だけど、外から見たってわからない。でもこれまでに経験したことのない立場に置かれ、裁判を聴いて、例えば被害者の被害のひどさを写真などで見たとしたら、思い込みや先入観はいけないと理性を保てるだろうか。だから陪審員制度に賛成できない。冷静に判断できる人なんてそんなにいないと思う。法廷サスペンスやドキュメンタリーを観ていて、いつも良くない制度だと思ってしまう。無実の人が無罪になる話だったとしても、そこにどうなるかわからない不確実性がある。本作でも法廷で話されていたこととは違うことで判断していた。自分で捜査しようとした元刑事だけが悪いとは思わない。法廷で語られていない過去を持ち出すの同罪。差別心や先入観や個人的背景で、無罪の人を有罪にしようとする人はいくらでもいる。だからといって、法曹の世界にしかいない裁判官が、常に公平・公正とも思わない。日本が高い有罪率なのは警察と検察が結託して「権威」を保持しようとしているせいで、有罪率が高いとその分、冤罪も多い。日本の陪審員制度は裁判官も加わることになっているからアメリカのこれよりマシなのだろうか。可視化されないからそれもわからない。警察や警察の取り調べも隠されている日本で、どこまで起訴が真犯人に行なわれているかどうかもあやふや。その改革をすることも永遠になさそう。

この映画のようなことは起こり得るし、あったけど誰も知らないだけかも。ずっとバレていない人がいるかもしれない。
何とか無罪にして、容疑者も自分も助かろうとしていて、無罪になればまだマシだったけど、判決後の検事との会話の台詞で、他人に罪を着せた自分が「善人」だとか、真実が正義とは限らないとか言っていて、虫唾が走った。

前情報もなく観て、どうするのかとドキドキしながら、あっという間に観終えた。着想が良い作品だった。
Stella

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