"ウルグアイ空軍機571便遭難事故"を扱った作品としては「生きてこそ」を思い出す。30年前に観たあの作品はあまりに衝撃的で、かつ素晴らしく、いつか再鑑賞したいと思っていた。
そんな折、同じ事故を扱ったこちらの作品がアカデミー賞にノミネートしたという事を知り、Netflixで鑑賞。
1972年、ラグビー選手団を乗せてチリに向かったチャーター機"ウルグアイ空軍機571便"は、アンデス山脈中心部の氷河に墜落してしまう。乗客45名のうち生き残ったのは29名。世界で最も過酷な環境に取り残された生存者達は、生き延びる為に究極の手段を迫られる—— 。
監督はフアン・アントニオ・バヨナ。代表作は2004年のスマトラ島沖地震による大津波の被害を描いた「インポッシブル」。ディザスター作品を描かせたら彼の右に出る人はいないんじゃないかと思う。それ程にリアル。それ程に恐ろしい。
誰も知っている俳優がいない。
それもその筈。
キャストはウルグアイとアルゼンチンの俳優で構成され、その殆どが新人なのだそう。
飛行機が裂け、人が投げ出されていく。
一瞬の出来事。
そして生き残った者達が見渡す限りは、
山、山、山。
辺り一面が遥かに高い雪山に囲まれた面々。一気に襲いかかる絶望感。そして、夜になれば容赦なく命を奪おうと気温が下がる。
飛行機が墜ちた時に人が死に、
夜を明かす度に人が死に、
雪崩が起きて生き埋めになり人が死に、
空腹の果てに人が死ぬ。
人が死ぬ度に、墓標に刻むが如くその名が画面に映し出され、胸が締め付けられる。
登場人物が多いので、名前も顔も覚えきれやしない。でも、その1人1人が尊い命を呆気なく落としていく。
71日にも及ぶサバイバル。
極限まで達した飢餓の果て。
人肉を食すか死を待つかの究極の選択。
それを非難する者がいたとしても、それは同じ経験をした者でないと非難は出来ないだろう。
劇中撮影された写真が、実際に撮られたものに限りなく似せている事で、事故に対して誠意をもって撮影に及んだのだとわかる。
悲劇だけど、奇跡。
劇中の台詞を何度も反芻した。
諦めず、生きようとした搭乗者達に心からの敬意を表したい。
やはり、「生きてこそ」をまたいつか観なければと思った。