このレビューはネタバレを含みます
アカデミー賞ノミネート作品、SNSでも話題になっていた本作をついに鑑賞しました。
久しぶりに天晴れだと思うほどよくできた作品です。
割と裕福な家庭で育った純文学作家モンク(黒人)は、"世間"が求める「免罪符的な」お涙頂戴大義万歳な黒人ストーリーに嫌気がさしていた。
そんな時に、じゃあ合わせてやるよと
テキトーに書いた作品が大バズりして、、
と言ったストーリーなのだが本当に各方面に殴り込みに行ったかのような作品でとても素晴らしいです。
終始笑いこけてました。笑
特に作品を出版社に投げた時に、
こんなバカみたいな作品でも出版社側からの熱烈なオファーを受けろという代理人に対して
「これ以上出版社がバカになってどうすんだ」
と言い放ったセリフが本当に好きすぎました。
しかし、自身の生活に目を向ければ
不倫をし死んだ父、アルツハイマーの母、急死した姉、ゲイであることを隠してきた兄と
主人公のリアルな生活が垣間見えます。
でも世間が求めている"自叙伝"はそうではない。
「貧困でヤク中で、ラッパーで危険な男だけれども実は心優しくて、勘違いされて白人警官に殺される」ストーリーなのです。
ここの対比を丁寧に描いているからこそ、
ブラックすぎるジョークが活きてくる。
脚本の設計に脱帽しました。
個人的に好きだったのは、
商業作家に走った黒人女性作家と
純文学作家で黒人男性の主人公の
対比、対立です。
昼食を取りながら静かに議論する様が良かった。
しかし話してる内容はかなりシリアスで、
これが芸術家たるものが皆通るジレンマなのかなとも思いました。
自分が作りたい作品と
世間が求めてる作品。
世間が求めてる作品を作ることが悪ではないが、
それによる認知の歪みや弊害もある。
かと言って自分が作りたい作品では食えるとも限らない。
審査員の1人も言ってましたよね。
「何百ページにもわたるマスターベーションみたいな作品を読む気にはならん」と。
まさしくその通りです。
しかしだからこそ、
世間が求めている"自叙伝"はこれでいいのでしょうか?
と考えさせられる作品でした。
タイトルは【アメリカンフィクション】
見終えた後に、なんて皮肉な言葉なんだと改めて思う。そんな作品です。