あおき

アメリカン・フィクションのあおきのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0
㊗️アカデミー賞脚本賞受賞

「“可能性”って
現状に不満を持つ人が使う言葉よ」

***

おもしろーい!!

誰もが楽しめるブラックコメディをやりつつも社会問題を痛烈に提示する悲喜劇っぷりは、エンタメと風刺のバランス感覚もジャンルも全く違うけど「パラサイト 半地下の家族」に似た映画的ポジションであるように感じたりした。

主人公は偽善的・表面的な人種意識に需要が存在する社会の風潮に嫌悪感を示す。けど彼自身も(黒人としても、個人的にも)劣等感を内面化していて、”バカには分からない文学”が売れず”黒人的な文学”が飛ぶように売れる社会を冷笑することでその対立構造に囚われている。
現状の不満に執着せず、捻くれることなく、世に応え・響く型を見つけてゆく。その結果、民族やマイノリティがフックアップされれば良いし、未来が多少平和になれば良い。社会はそう簡単に変わらないけど、それはそうと凛として生きようぜ、みたいな達観を感じた。

物語もそうだけど、ちょっとしたシーンも好み!

「手漕ぎ(ロー)vs徒渡り(ウェイド)事件」のジョークとか、
「あれは蔓棚(パーゴラ)か?」「いや東屋(ガゼボ)だろ」みたいなやり取りとか、小難しいジョークが多いのも意図的なんだろうかね…教養が必要な娯楽のシュールさを皮肉ってるような感じ。

あと無言で写真を見上げるシーン。「悪魔はいつもそこに」「燃ゆる女の肖像」とかみたいに象徴的なピクチャーを映し出すだけでメッセージを残そうとする映画も好きなので刺さった。
あおき

あおき