あおき

ボーはおそれているのあおきのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

初見の感想としては正直、全く着いてゆくことが出来なかった…!笑
パンフレットのポイント解説を読んでやっとそこそこ腑に落ちた感じ。

幻覚(っぽい)描写が半分以上の時間を占めてるんじゃないか?現実との境界が分からなくて、物語の軸を捉えにくくてキツかった。監督の前作「ミッドサマー」と比べちゃうと売れてないみたいだけど、まあかなりチャレンジングな作品だったのだろうと思う。

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とにかく母親の呪縛がテーマ。そもそもその観点をしばらく掴めずにいたから最後までノリきれなかった、ホント私の落ち度です。。。

ボーは外界や他者は苦しめ合う存在であると恐怖していて、それが原因で母親の元へ帰省する機会を逃してしまう。そのことに憤った母親は自身が怪死した(という嘘の)報せを超巧妙にでっち上げ、ボーが母親の元に戻るのか、愛の還元は為されるかを試す。
(外界に対する恐怖も恐らく「セックスで死ぬ呪い」と同様に母親の過保護によって植え付けられたものなんじゃないかと。つまりボーが母を愛していないからではなく、歪んだ母がボーを歪めて、母の望まぬ結果が生まれている。しかもその罰をボーが受けるという、最悪なスパイラルになってるのが辛すぎる。まんまよく虐待で見られる構図と同じ。)

「カオスな旅」はボーの回帰への使命感を強めつつも、同時に少しずつ自身の生い立ち・呪縛に目を見つめ、自立しようとする「自分探しの旅」的なセラピーとしての役割も持ちはじめ、「他の家族や愛を以て解放されたい想い(※)」が無自覚に育ってゆく。

最後のシークエンスで他者を愛することや母親への憎悪を発露するに至るも、それすら母親の呪縛の前に砕かれ、最後には諦めたように「水」に沈んでゆく=母の羊水に、愛の呪縛の下に回帰してゆく。

監督が細部にもこだわりすぎていて全然掴みきれてないけど、いくつかの解説記事を観た感じの個人的解釈はざっくり上記の感じ。
劇場でもう一度観て確かめる気にはならないけど、、配信とかされたらあれこれ考えながらディテールを追いたいなとおもいました!

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※見知らぬ家族の“息子”のように歓迎される。困惑するも優しさに満ちた(ように思える)家族の暖かさを疑似的に感じる。が、実際の家族ではないが故に大きな綻びが生じる。

“父”として家族に恵まれる夢物語に想いを馳せる。が、死の暗示によって目が覚める。

愛した女性との性愛を通して死の暗示を解き、“父”になれる可能性、つまり自らの本当の家族を築ける可能性に満たされる。が…。

ボーがセックスをしたら死ぬ…という暗示を親からかけられていたのに、いざ実際にヤってみたら平気じゃん!!やった~最高!ってままに騎乗位でイッたら、ボーじゃなくて女性が腹上死した(しかも時間が止まったように硬直している)のが超怖かったし、超面白かった。あのシーンの静寂は完璧。あれも母親によるなんらかの呪い(又は薬物投与)によるものなのだろうか…。
あおき

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