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ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画のCookieMonsterのレビュー・感想・評価

3.6
その計画は最初から破綻している
考えたつもりの計画には無数の綻びに溢れていて、それに気づきながらもどこかで大丈夫だと無根拠に信じる彼らには想像力とリアリティの手触りが欠如している

命を身籠る鹿を事もなげに道脇へ突き落とすシーンは象徴的だ
環境を守ることを大義とする人間が通行の障害として自然の命を排除する
それは作品冒頭にある、空になった鳥の巣を木に戻すのと対照的だ
目に見えないものに優しく、目の前の命をいとも容易く殺す
そこにはわかりやすい矛盾がある

彼らは事の重大さに気づかずに淡々と計画を遂行する
そこに自分たちが為す計画が引き起こす末路を想像することができない
ダム決壊のシーンがないのは予算の兼ね合いもあるかもしれないが、現実を直視する事のできない彼ら自身の隠喩に思える

作品のインパクトとしては、事件発生後の良心の呵責に苛む過程の方が観客には大きいと思う
けれど、この前半の現実から乖離してしまい想像力を失った彼らの淡々とした姿の方に寧ろ心に残った

自分たちの正しさを盲信する彼らの姿はラディカルな活動環境保護活動家のそれであり、ライカートのシニカルな目線が怖い
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