けーはち

アメリカン・フィクションのけーはちのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.7
世間が黒人作家に求める需要にウンザリした純文学者が開き直って「いっそ乱暴なスラング・銃・ドラッグ・犯罪まみれの黒人のステレオタイプな物語を書くぞ。これで満足か!」と変名で書いた小説が大ウケし映画化。今風のポリコレの構造を揶揄するブラック・コメディ。

家政婦を使う程度にアッパーミドルな医者の家系だが、父と姉が急逝し母はアルツハイマーで兄はゲイでフラフラして頼りなく、主人公が稼がなきゃ、という境遇。そんな折にヒットを放つも胸中は複雑。黒人作家としてウケる虚像と彼自身のアイデンティティのズレや、家族との関係にどう決着をつけるのか、と注目していたら、さらにメタ構造のオチで笑わせてくれる。それもこれも結局は製品としての物語の類型に過ぎねーって訳か。メタな皮肉に終始した形になったのは、公共に求められる社会性からの逃げと取るか、「んなモンをエンタメに求めんな👎」という一貫した主張か、どちらと言えるか?