花火

異人たちの花火のネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

未明のロンドンの街並みを写し出す実景ショットがボヤけていきガラスに写った男性の上半身が見えてくる。このファーストショットは、本作はガラスの演出が重要だと宣言している。実際、アダムとハリーが最初に気づくのは窓越しだし、実家のドアでも訪ねるアダム(の反射した像)と中にいる両親とが重ねられる。特に終盤、ハリーを伴って両親に会わせようと実家に行くシーンでは、締め出されたアダムが窓を叩き、そしてついに割ってしまうという決定的な瞬間がしっかり行動として示される。もうひとつ重要な演出がズームインで、とりわけベッドから起き上がったアダムが窓枠の前に立つ→グーっとズームするとフォーカスが外れてそのままクラブに入っていくカットにつながるとか、夜に眠れず両親の寝ているベッドに横たわり母と見つめあいながら会話するカットなど、異人との交流が深まるにつれ現実が曖昧になっていく場面で印象的に使われる。それがラストに、ハリーも異人だったことを知ったアダムが彼をベッドの中で抱きしめるのを真上から見下ろす画面が、徐々にズームアウトしていく感動的なショットに反転していて効果的。台詞はどれも繊細で素晴らしい。そして個人的には、実家でクリスマスの飾り付けをしながら「Always On My Mind」の歌に乗せて母がアダムに思いを伝えるシーンで、アダムが座り込んでいるために母の視線がかつてそうあるべきだったように子供を見つめるように見下ろす角度になっているのが良かった。
花火

花火