魯肉飯

異人たちの魯肉飯のネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

トリガーアラートないけど精神的にセンシティブな話だったので注意が必要。
孤独と寂しさ、心の弱みに気が付いた瞬間に空いた隙間からふっと入り込んできた異人たち。
吸血鬼や死神、痛みや恐怖を受け入れる強さや追い払う勇気があるか。(Let me inの文脈)感じる苦痛に時間は関係なく、過ぎた昔のことでもふと蘇り心の扉をノックしてきたり眼前にパッと広がったりする。
時代の変化、移り変わりと世代間の隔たりといったところを、日本の高度経済成長を経た昭和的なノスタルジーで描写した原作とは違い、ジェンダー、性愛など80年代イギリスの歴史的観点やエモーショナルな郷愁、美しさで見事に再解釈・再構築し現代的に表現している。
家族の枠組みから離れているという話、自分たちが社会の枠から外れていると思わざるを得ない断絶のような疎外感と寂寥、未来への途方もない恐怖。夢か幻覚か心の逃避か、全てがないまぜになって多重夢のように襲いかかってくる。サイレンが鳴り響き警告灯がぐらぐら光る。
一人で生き延びてきたアダムはずっと言えなかったことを打ち明けて肯かれ、そして自身も別離を受け入れる。互いの受容。心を閉ざさず痛みと恐れに寄り添うひらけた気持ち、夜空に光る無数の星のように、どこかに、近くにそんな優しさはある。相容れなくても喧嘩ばかりでも、そこにいるだけで、心の側にくっつくだけで大きく包まれるような安らぎ。相手との対話だけでなく自己との対話によってもそれはもたらされる。
35mmフィルムの美しさと演出、英題も良すぎるし監督も俳優も全部最高。クィアとしての固有的な孤独を抱かせる、括りに縛り付け隔離するようなゾーニング的現実の困難を乗り越えた先の普遍性、星の数ほど存在する全ての異人たちの孤独に寄り添うような救いがある自由な世の中になってほしい。文章にするの難しい。
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