2024.11.28
A24製作。
ニコラス・ケイジ主演のドリーム・スリラー。
製作は『ミッドサマー』のアリ・アスター、監督は『シック・オブ・マイセルフ』のクリストファー・ボルグリ。
普通の生活を送っていた大学教授、ポール・マシューズの日常は、ある日突然一変する。
娘のハンナの夢にポールが出てきたという話を聞いたかと思いきや、大学の講義室に入るなり学生たちが騒ぎ出し、初めて行ったレストランの店員もポールを見たことがあるという。
妻のジャネットと共に行った劇場で再会した元恋人の夢の中にもポールが出ており、彼女によるポールについての記事が執筆、公開されてから、SNS上にはポールを夢の中で見たという投稿が溢れる。
テレビにも出演し、その影響力を利用しようと代理店もポールに近付き始めるが、やがて、何もしていなかったはずの夢の中のポールは、恐ろしい行動を取り始める。
この“夢のような話”の結末とはー!?
フゥ〜!
このソワソワする感じのスリル、さすがA24とアリ・アスター、クリストファー・ボルグリ監督といったところか。
関係性のない人たちが同じ顔の男を夢に見るというのは、「This Man」の都市伝説を思い出しますが、あちらは歴史が古くて作品にされると色々と脚色されがちで、今作ぐらいの塩梅だと初めて見るような恐ろしさがありましたね。
夢の話はオチが無いから人にしない方がいいなんて聞きますが、たかが夢だとしても見た人にとっては話したいもの。
もし知ってる人や目の前にいる人が夢の中に出てきていたとしたら、話したいを通り越して恐怖を感じるのかもしれませんが、一番夢の内容が気になっているのは知らないうちに他人の夢の中に出ている自分自身でしょうね。
ニコラス・ケイジ演じるポールもまた、最初はたかが夢の話と笑っていても、その影響が現実にも及んでくると、徐々にその表情には焦りと緊張、恐怖、そして狂気が。
ポールにとって、彼の夢を見る人にとって、何が現実で、何が夢なのか、境界が曖昧になっていく。
夢の場面と現実の場面とで、主に音を使って演出を分けていたのが印象に残りました。
序盤こそその違いからあぁ、これは夢の場面かと安心しつつ恐々としつつ観れましたが、話の中で夢と現実の区別がつかなくなってくるにつれ、演出面でも区別がつかなくなっていき、観ている側まで困惑させてくるような仕掛けが。
何が起きてもこれは夢だからで済ませられていたのがもはや懐かしいくらい、中盤以降の夢の場面は現実っぽさもあるし現実の話的に夢じゃなくてもおかしくないしで、やはりソワソワしてしまいますね。
果たして今作の何が一番“夢”だったのでしょうか。
普通の生活を送っていたポールがバズり、広告塔に祭り上げられ、恐怖の象徴と化したことか、ポールの存在から集合意識が発見され、他人と思考を共有できるようになったことか。
何か兵器的なものが使われただとか、宗教的な禁忌をポールが犯したとかではなく、理不尽に“夢”に翻弄されていく様も良かったですし、夢はやはり所詮夢、もっと現実と交錯してもはや何が何だか分からなくなるぐらいのスリラーだったとしても、まだまだ作品として受け入れられる気がします。