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華岡青洲の妻のyukikoのレビュー・感想・評価

華岡青洲の妻(1967年製作の映画)
4.2
若尾文子映画祭 22本観た中で一番良かった。

数分ごとにいろんな意味で「わぁ!」と思う場面やセリフが次々繰り出されてきて、まったく飽きる暇がなかった。

「自らの身を呈して愛を競い合う嫁姑のバトル」ではなくて、運命に導かれた人たちのぶつかり合う誇りの話だった。
文子様は、加恵の憧れ、戸惑い、誇り、悔しさ、いろいろ複雑な想いが細やかに描かれていたのが、とてもよかった。

2人目の妊娠がわかった時、あのタイミングで「次は男やで」と悪気なく言った男に、命がけで尽くすことができるのかしら… (まぁ私は無理) と思ったけれど、加恵は武家の娘だったから…
いくつか、ゲェッと思った言動はあったけれど、心底憎くは思えない雷蔵様の華岡青洲はよかった。
伊藤雄之助の父役は心底気持ち悪かったけど、あれに嫁ぐ運命だった姑・高峰秀子様のの肝の座り方に深みが出て感じられた。

妹たちの存在もよかった。
妹(渡辺美佐子)の死に際の「私はもう、おなごには生まれとうない…嫁に行かなんだのは幸せやった。嫁にも姑にもならんで済んだ」という言葉が、一番心に残った。
昔、それほど不幸せな結婚だったようには見えなかった大正生まれの祖母が私に「結婚なんかせんでも自分が幸せなように生きたらええ!」と意外なほど強めの語気で言ったのを思い出した。

夫に尽くす妻の単純な美談としては描かれてないよな…とはいえ、自分が過去に全身麻酔で手術してもらった時、このまま目覚めなかったら…と思ってた時のことを思い出しながら観た。
壮絶な犠牲の上にある医学の進歩には感謝。

(若尾文子映画祭)
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