実に面白いタイ制のオカルトホラー。
主人公のニンは、経済的問題から夫のクウィンと娘のインと小さなマンションに引っ越し、大きな自宅を引退した医師を名乗るラトリーとその娘に貸し出す。
ところがその直後からクウィンが奇妙な行動を取り始め、元の家の隣家の住人からは、ラトリーたちは夜な夜な怪しげな儀式を行なっていて、カルト宗教ではないかと警告を受ける。
映画は前半が徐々に怪異がニンと家族を覆いはじめ、次第にその狙いが娘のインであることが明らかとなってゆくパート。
後半が同じ時系列を別の視点から見たバージョンとなっていて、同時に隠された夫の過去も明らかとなり、クライマックスに二つの視点が収束するという凝った構造。
サブタイトルの「凶愛の家」とはなかなか上手く付けたもので、立場は違えど、主要登場人物全員の行動原理が「愛」なんだな。
ただし、愛は別の方向から見ると邪悪となることもあるというのがポイントか。
小道具などのディテールの使い方も巧で、切ない余韻を感じさせるラストまで飽きさせない。