バス・ドゥヴォス監督の作品を続けて鑑賞。本作品は縦横1対1の四角い画面である。レトロ感とあたたかみがある。
主人公が唯一の得意料理というスープを巡って、周囲の人々との関わりが描かれる。登場人物はそれぞれの事情を抱えているが、詳しくは紹介されない。この作品も説明が少なく、各シーンの解釈は観客に委ねているようだ。
故郷のベルギーを離れて、ルーマニアでひとり暮らしをしながら、建築関係の仕事をしている主人公。何らかの事情で工事が中断される。再開の見通しは暗いかもしれない。経済がうまく回っていないのだ。
友人、姉、自動車工場を営む親戚、店で知り合った東洋人の女性。スープを飲みながら語り合う話は、他愛がなくとりとめもないような内容だが、言葉の端々に登場人物の気持ちや人生観が見え隠れする。
苔に生命を感じる。時間も感じる。そこに魅力的な他人がいれば、必然的に行き着くところに行き着く。生命は他の生命との関わりで持続する。人と人も同じだろう。森の時間は、愛し合う時間だ。
まだスープを飲んでいない東洋人女性とは、一緒に飲む時間が期待される。それは主人公の約束でもある。潔い終わり方がとてもよかった。