ジャン黒糖

喪うのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

喪う(2023年製作の映画)
3.8
キャリー・クーン、ナターシャ・リオン、エリザベス・オルセンが三姉妹役で演じるNetflixオリジナルの感動ドラマ。
原題はそのまま『His Three Daughters』、邦題もある意味そのまま"喪う"。
疎遠となっていた三姉妹同士や、それぞれの父との心の距離感を指しているような邦題で、これはこれでアリだと思った。
エリザベス・オルセン見たさに鑑賞したけれど、観終わってみると三姉妹の実在感が見事だったし、なかでもナターシャ・リオンの存在感が印象的だった。

【物語】
余命いくばくもない父の最期を看取るため、久しぶりに集まった三姉妹。
反抗期を迎える子に頭を抱えながら、姉妹を仕切りたがる長女ケイティ。
いまは結婚して遠くで夫と娘の3人で暮らす穏やかな性格の三女クリスティーナ。
そして2人とは腹違いの、父の亡くなった再婚相手の連れ子で、いまも父と2人暮らし、大麻愛好家の次女レイチェル。

疎遠だった三姉妹は、父の看病を通じて最初は衝突し合っていたが…。

【感想】
三姉妹の実在感が姉妹/兄弟あるあるというか、国とか関係なしに共感できた。

仕切りたがりの長女ケイティは、画面に登場して早々喋りの止まらない異様な姿に、「この人が言いたい本題は何だろう」と考えてしまうくらいちょっと引いてしまう。
途中、次女レイチェルの部屋のドアを開けて呼びつけるなり言いたいことをひとしきり長いこと話し切ってわかったか聞いたときのレイチェルの「わかった(Sure.)」の一言とか、絶妙な間過ぎて笑ってしまった笑

また、三女クリスティーナは自分が心穏やかにいられるためのルーティンをちゃんと持っている、というかむしろ他2人に比べて過剰に持ち過ぎてるせいで彼女もまた若干空気読めない感じは流石末っ子というか笑
久しぶりの再会と父の病状にまだ緊張しているのか、序盤ケイティに続いてお喋りが止まらないクリスティーナが話の軌道を元に戻そうとするところとかリアルだった。
そして、生活基盤が安定しつつ本人なりには苦労している感じ(ただ、レイチェルに比べたら恵まれた悩みであろう内容)や、姉2人が若い頃先に家を出たり反抗期を迎えた姿を見てきた分の彼女なりの父との思い出話などには実はしっかり者としての末っ子の側面も併せ持っていると思った。

そして次女レイチェル。
父といまでも一緒に暮らす、1番距離の近い存在ながら大麻好きでスポーツ賭博に明け暮れる様子はケイティからすれば不安の種でしかない。
ただ、レイチェルは他2人とは腹違いの娘としてそもそも血縁関係になく、それがいまだに拗れた関係性のひとつの要因となっている。
いままでが疎遠だったことから今後も関わらなくとも別に生活に支障はない。まして父が亡くなれば、と本人も思っていたかもしれない。
でも、だからといって彼女の人生に他2人との共通点がない訳ではない。
そのことに気付く後半以降の、レイチェルが徐々に2人と心を通わせていく場面が良かった。
(特に妹クリスティーナとは早々から良い関係を保とうとする"2人目の子供"に関する会話シーンとかはこれまた三姉妹のリアルなバランスとして良かった)


この映画、気付けば一つの画面内で三姉妹が同じ方向を向く場面がラスト以外にない。
特に序盤はほとんどが1人のピンショットか、3人映ったとしても3人のうちいずれかの顔が見えていない、視線がバラバラの場面だったりする。
それが中盤以降少しずつ2人が画面に収まる会話シーンが増えだすけれど、それもドアや壁越しだったりする。

そしてラスト。
奇跡が起きたような超現実的シーンが見れるが、そこからの三姉妹がまるで少女時代に戻ったかのようで感動的。

3人の演技のアンサンブルが堪能できる。
キャリー・クーンは最新のゴースト・バスターズシリーズのあのお母さんか。ああいうキツい長女っているよなぁ。笑
エリザベス・オルセンの穏やかだけど実はちゃっかり現実を見据えている末っ子、良かった。
そしてレイチェル役のナターシャ・リオン、彼女の退廃的な危ういギリギリを生きるような姿に引き込まれる。

3人の演技を味わう、見応えのある一本だった。
ジャン黒糖

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