そういえば観てたのに投稿していなかったデビッド・リーチ監督作『ブレット・トレイン』。
原作は伊坂幸太郎の『マリアビートル』、主要キャストの大半は英語圏の俳優らでキャスティングしながら日本の新幹線を舞台としたアクション娯楽作。
海外が描くトンデモ日本が観られるのは予想していた通りだけれど、そのトンデモ設定にちゃんと「日本の原作アリ」という裏打ちされたそれなりのロジック、伏線があるため、いざ観終わると『ウルヴァリン SAMURAI』を観た時に感じたストレス程には反感を抱くようなことはなかった。
というか、デビッド・リーチ監督と共に87イレブンを立ち上げた盟友チャド・スタエルスキが主に監督している『ジョン・ウィック』シリーズにおける殺し屋業界の"鉄の掟"を観ているときな感じる、「これはこれでアリだよね」的な愛でる独特の世界観が成立していると思った。
ただ!
ひとつ、勿体無いことがあるとすれば公開時から批判されていた、所謂ホワイトウォッシングされたと受け取られても仕方ないキャスティングの人種構成割合。
いや、厳密に言えば各キャストはそれぞれの役をコミカルに演じていてそこは良かった部分で、どちらかといえば人種構成の割合がそのまま上映時間に占めるインパクトに直結してしまっているように見えてしまったことが(作り手の意図はさておき)この映画の勿体無いところだと思った。
たとえば「ヤッター!」でお馴染み?のマシ・オカさんと『THE BOYS』での活躍ぶりが最高な福原かれんさんら日系俳優たちによる車掌たちの出番がまぁ少ないこと。
福原かれんは本作が公開された2022年には自身のインスタで見知らぬアジアン・ヘイトから暴行被害を受けたことを打ち明けており、この一件と映画は切り分けて考えるべきだろうけど、両者ともドラマ、映画での活躍ぶりを考えるとこの脇役ぶりは勿体無さすぎる。
マシ・オカさんが演じる車掌も、細かい演出が実は後々の伏線だったりする本作において「もっとこの後に出番あるのかな〜」と思っていたらいつの間にか自然と消えてた笑
たしかに、ヤバい殺し屋コンビのレモンとミカンは本作でもインパクト大の活躍を見せる。
ただ、個人的にはこのコンビの出番が本編全体の割合においてかなり時間を割いているような印象を受け、たしかにアーロン・テイラー=ジョンソンもブライアン・タイリー・ヘンリーも人気俳優ではあるけれど、欲を言えば彼らの出番を多少減らしてでも他のキャストたちの比重を上げて欲しかった。。
で、ここからは人種抜きにしても、この映画の各キャラの登場配分が勿体無いと思ったもう1人が毒殺専門の殺し屋ホーネットを演じたザジー・ビーツ。
彼女の登場は話を引っ張るだけ引っ張って顛末がアッサリすぎる!!
その顛末に対する主人公レディバグの応対とかは笑えるんだけど、物語全体のバランス的に彼女は勿体なかった…。
まぁ、ひとつ自分なりに仮説立ててフォローしてみると、ザジー・ビーツはデビッド・リーチ監督作『デッドプール2』でドミノというアクションもキャラも最高の人として登場しており、同監督作にはこれまでもそれこそブラット・ピットやライアン・レイノルズらがカメオ出演するサプライズがあったことから、彼女も本作ではそういったサプライズ枠として出演し、監督のお気に入り俳優の仲間入りをしたのかな、と想像してみる。笑
しかもドミノは本作ホーネットの運の悪さとは真逆の幸運の持ち主、という対比もちょい役の出し方としては最高!
ただ、それもあくまで映画の外の話を含めた推察なので本作の物語全体の流れからするとホーネットはもっと早くに正体を表して欲しかった、。
という、キャストの配分は本作ちょっと勿体ないアンバランス具合だった。。
とはいえ、冒頭触れたように、キャスト以外の細かいトンデモ日本描写に関しては、それなりに練られており、そこは好感ポイントだった。
たとえば自販機を活かした、ペットボトル主観の描写などは各殺し屋のバックグラウンドを描く本作特有の演出に倣っていて観ていて楽しかった。
そして本作のある種の主人公である新幹線、その名も「ゆかり」。
新幹線なのに普通車両10両に対し、曰く「ファーストクラス」がなんと6両もあり、途中車両にはバーカウンターもあればキャラクターのラッピング車両もある。
なにこのバラエティ豊かな新幹線!!笑
ただ、それもこれも、思い出すだに印象的な格闘シーンのために廃された舞台となっていて、そこは良かった。
また、殺し屋同士のバトルを描いた作品ながら、オフビートな笑いや過剰な演出で描くのも、独特の世界観を創出するうえで良かった。
何かと人をきかんしゃトーマスのキャラクターに当てはめようとするレモンは、結局は殺し屋相手にするから何かと相手をクソッタレの厄介者扱いとして「ディーゼル」と呼んじゃう笑
また、静岡でミカンが途中下車するときには、流石はアーロン・テイラー=ジョンソンの長身を活かした、90度横にカメラを倒したアングルから映す演出とか、いちいち味が濃くて良い。
この濃さが、いちいち殺し屋業界独特の世界観を表しているようで笑える。
というわけで、キャスト配分のバランスは悪いけど、一個一個はちゃんと笑える本作。
なかでも一番良かったのは、本作で主演を務めたブラピ演じるレディバグ。
破壊的な悪運の持ち主で、ウルフやホーネットたち殺し屋と対峙する状況になっても冷静に相手を諭そうとしたり、困りながら人生訓を語ろうとする姿は笑える。
彼の個人的名言は「人を指さすときは残り4本の指は自分をさしている!」
ちょっと良いこと言ってる風〜!!笑
ブラピはずっと格好いいのに、無理に若返りしようとせず、自身の老いを受け入れようとしているかのような近年の姿は結果的に格好いい。
いまとなっては『SHOGUN』で完全に全米を席巻した名優・真田裕之さんは本作においてどっしり構えたポジションで格好よかった。
彼が本作にいて良かった。
"レディバグ"の意味の東洋的な紐解きの場面、なんか意味はわかんないけど格好よかった笑
彼と対峙する"白い死神"は顔の正体を引っ張った割に若干肩透かしを喰らってしまった感があるのは、別にキャストがは期待を下回ったとかではなく、これもキャスト配分が問題で、単純に後半腰をおろした真田裕之さんが格好よすぎたせいはあるかも笑
ジョーイ・キングが演じるプリンス(王なのか王子なのかややこしい笑)も、悪くはなかった。
こういう憎たらしいやつはスカッとする倒し方しないとな!
最後に、様々な有名俳優がカメオ出演している本作。
『ザ・ロストシティ』と続けて観たことで、お互いの作品がシェア?交換?しているようでそこは観てちょっと楽しかった。
カーバーの病欠で危険な仕事をレディバグは代理で引き受けることになるけれど、その正体は…笑
はい、ということで一個一個の要素は楽しかった。
けどトータルバランスは悪い意味で悪かった気がした。。
ブラピは最高だったよ!