とり

ザ・カップ 夢のアンテナのとりのレビュー・感想・評価

ザ・カップ 夢のアンテナ(1999年製作の映画)
4.0
チベット仏教の修行に励む少年達のありのままの日常を描いた、心温まる映画でした。
僧侶とはいえ同じ普通の人間なんだと思わされたり。出演者はほとんどが本物の僧侶だそうで、映画素人。それがこの映画ではとてもいい効果となっています。

日々の修行の中にも小さな楽しみを見出しつつ、とてもおおらかな環境の中にいる修行僧たち。授業中に先生にバレないようにコソコソ手紙のやり取りをしたり、寮生活で夜中にこっそり抜け出して街に出かけたりといった類の、誰しもが共感するエピソードをとても自然に描いています。本当に私たちと変わらないんだなぁって、ストイックに厳しい修行に励むイメージがガラリと変わりました。

そういう人間らしさを感じる土台が上手く演出されている中に、ストーリーの核となるサッカーのワールドカップという一大イベントを持ってきています。このワールドカップのテレビ中継が楽しみでしょうがない修行僧たち、決勝戦をなんとしてでも見たい思いからあれこれ画策するわけです。
ある種台風のようなものだなーと感じました。非日常というか台風の接近にドキドキ、ちょっと気分が高揚するけど、通過してしまうと再び平凡な日常。

ダイジェスト的に修行の様子も見せてくれますが、とても荘厳で伝統を感じます。チベット仏教の教えも巧みに盛り込まれていますが、人間の本質的な部分を説いているので全然違和感を感じません。
「人はみな物欲や何かしらしがらみがある。それら煩悩を捨て去るには他人を愛することである」
宗教の違いを超える根本的な考えだなーなんて、普段宗教には全く関心がない私でもちょっと心に響きました。

映画に出演している僧侶たちは今でも日々の小さな楽しみを感じながら修行に励んでいるんでしょうね。物欲だらけの超ナマケモノの私には想像もできないくらい人間として充実した人生なのかもしれません。
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