2025年 143作目
(劇場 110作目)
最初タイトルだけ見てミュージカル物かな?と思った人は少なくないはず。
「歌う」のSINGではなくシンシン刑務所のシンシンなのだ。
ニューヨーク州にある最重警備の収監施設「シンシン刑務所」そこで行われている
RTA(Rehabilitation Through the Arts)プログラムに焦点を当てた作品で、
5年前に公開したフランスの映画、
《アプローズ!アプローズ!》にテーマは似ている。
ただ今作は出演者の85%が元受刑者で本人役を演じているのも多い。
エンドロールで、as himself と出ている事が胸熱。
ただ出所した刑務所に戻ってくる感覚は辛いだろうなとも感じる。
VOGUE JAPANのインタビュー記事にこの辛さを乗り越えられた理由は、「この映画の持つ意味そのもの」だったという。「どんな不快感や苦しみよりも、この物語を伝えたいという思いが上回った」とマクリンが語っている。
印象に残るのが劇中の舞台作の中のセリフでシェイクスピアの戯曲《ハムレット》のセリフで『To be or not to be , that’s it’s a question 』(生きるべきか、死ぬべきか。それが問題だ』
その言葉そのものが刑務所内の苦悩を唄っているようにも感じる。
再犯率が高く刑務所に逆戻りする受刑者が多いアメリカでこの更生プログラムを経験した者たちは3%未満だという。
演劇で自分を解放し他者と分かち合い、コミュニティに所属し、自分の居場所がある事で再犯を防いでいるのだろう。
仲間の死や、それぞれの葛藤など描きながら、自己肯定していくストーリーが胸に染み、映画は終わりに向かい、出所後塀の外で再開するGとマクリンの友情を映すラストの晴れやかさがなんとも言えない温かさを感じる。
号泣作品というよりはうっすら涙が浮かぶようなそんな作品。