しん

違う惑星の変な恋人のしんのレビュー・感想・評価

違う惑星の変な恋人(2023年製作の映画)
3.5
東京国際映画祭にて鑑賞。微温的な恋模様とクスッとした笑いが心地よい作品。それぞれのキャラクターがほどよくダメな感じで、さらにどのダメさも被っていないという脚本が上手かった。

床屋を舞台に選んだのもよかったと思う。最後の洗髪シーンの爽快さだけでなく、むっちゃんが喋らなきゃいけないという規範だけ内面化している感じも説得力があった。会話を繋がなきゃいけないという思いだけがある状況の可笑しさが描かれているが、翻ってみるとふだんの無意味な会話の連続に私たちはどれだけ神経を使っているかということだ。そんな気づきも得られた。

アフタートークで監督がスペイン戦を入れた理由として、アクチュアルな時間軸を入れることでどこにでもいる五人として描きたかったという話をしていた。この効果はかなりあったと思う。電車の中で日々出会っている名も知れぬ誰かも、少し変で少し頑張って生きている。そんな小さな人間賛歌を感じた。
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