このレビューはネタバレを含みます
2024新作_142
学びは、もっと自由だ。
わたしたちは、きっと自由だ。
【簡単なあらすじ】
アメリカとの国境近くにあるメキシコ・マタモロスの小学校。子どもたちは麻薬や殺人といった犯罪と隣りあわせの環境で育ち、教育設備は不足し、教員は意欲のない者ばかりで、学力は国内最底辺だった。6年生の半数以上が卒業を危ぶまれるなか、出産のため辞職した6年生の担任の代役として、マタモロス出身の教師フアレスが赴任してくる。子どもたちはフアレスのユニークで型破りな授業を通して探究する喜びを知り、それぞれの興味や才能を開花させていく。しかし、思わぬ悲劇が彼らを襲い……。
【ここがいいね!】
メキシコを舞台にした映画といえば、最近では『ニューオーダー』や、少し前の『ボーダーライン』のような、治安が悪くハードな環境を描いた作品が多いです。
今作でもメキシコのハードな日常や現実が描かれていますが、それでも学校や教室の中はもっと自由で、もっと可能性があり、希望がある場所だということを伝えてくれる作品でした。
子どもたちが考えたい、知りたい、もっと探究したいという気持ち、その好奇心を刺激することが、学校や教員の本来の役割なのだと再認識させられました。
実際に、フアレス先生の型破りな授業を通して、子どもたちが学ぶことの喜びを感じ、それぞれの興味や才能を開花させる様子が描かれています。
また、映画全体を通して、学校の中で子どもたちがどのように成長し、学び、困難を乗り越えていくかが丁寧に描かれており、観ていてとても感動的でした。
学校の教室が、単なる学びの場ではなく、子どもたちの未来を築く場所であることを強く感じさせる作品でした。
【ここがう~ん……(私の勉強不足)】
作品の中で一つの学力テストに向けて、学校としては指導要領に従って教える必要がある中で、フアレス先生が型破りな方法で授業を進める点が、魅力的である反面、学校の校長にとっては少し厄介な存在として描かれていました。
また、作品の中で描かれた以外の授業や学びの内容も見てみたかったという気持ちがあります。
例えば、浮力や惑星の引力、哲学の話など、他の教科やテーマについても少し触れられていれば、より幅広い学びが描かれていたのではないかと思います。
さらに、映画の中盤から後半にかけて、子どもたちが直面する困難やフアレス先生の試行錯誤がもう少し描かれていれば、よりリアリティが増したのではないかと感じました。
【ざっくり感想】
あのような教室や先生、学校があったら素晴らしいと思わされました。
ただし、現実との折り合いをどうつけるかが永遠の課題だとも感じました。
パロマのお父さんが語ったように、教室から帰った後の現実との向き合い方、折り合いのつけ方が重要だということが作品を通じて強く伝わってきました。
特に印象的だったのは、作品の最後に迎えるいくつかの出来事や、赤ちゃんが新しく生まれて家庭を守らなければならないルペの話でした。
これらのシーンを通じて、現実の厳しさと夢や希望とのバランスが描かれていました。
また、ルペが突き詰めて考えた「最大多数の最大幸福」というテーマが、彼女の今後の人生に大きな影響を与えることが示唆されており、教育の重要性が強調されていました。
教育とは、教室の中で起こったこと、学んだこと、考えたことが一生忘れられないものであり、それがどんな困難に直面しても、その後の人生において必ず役に立つものであるということを改めて感じさせられます。