jonajona

メイド・イン・ホンコン/香港製造 デジタル・リマスター版のjonajonaのレビュー・感想・評価

4.5
99年香港の雑多でエネルギッシュな街並みが素晴らしい。内容は貧困に喘ぐ不良少年チャウが同じアパートに住む病床の女の子ペンに恋をして、弟分ロウと3人でささやかな日々を過ごすお話。なんだけど、内容よりもこのノスタルジックな絵力がこの映画の全てな気がする。若者らしくとてもセンチメンタルな心情を追いかけた作品で、ともすると恥ずかしくて見てられないものだけど、彼らの心情と香港の街全体がリンクするように同じく情緒的で一つの世界観になってる。
多分中国返還直前の香港が舞台という事で人の暮らしも、観る人の心情も大きく揺れ動く時代だったのかな…とかぼんやりと想像したり。主人公の両親や不遇な環境に振り回される心情が、間接的に中国返還という国の大枠に振り回される国民の気持ちを表したものだったんでしょうか。

○GOOD
・チャウたちが住む低所得者用アパートの延々と空まで続くような閉鎖的な異次元感。(ジャケ写のやつです)
延々にあそこから出れなさそうな雰囲気を可視化してて、なおかつ美しい。あれに惹かれて見ようと思った。

・とにかく全編街並みが異様なエネルギーで溢れてる。
田舎町の墓場で墓石を渡り歩いて自殺した女子高生を呼ぶ。子供が走り去るアパートの廊下。母親が勤めてたセブンイレブン。
父親を追って歩いた汚らしい裏路地の俯瞰図。すべて発展途上特有の力をまとってて、今日本の街角でロケハンしたらこうはならないだろうな。時代がもつパワーみたいなものを感じる。

・ヒロインのペンがかわいい。
ベリーショートヘアで顔が素朴。序盤主人公を誘惑する下りも子供が背伸びしてる感じがして可愛らしかった。

・主人公のへんなファッション
なんでそんな気持ち悪いお腹の出し方してんの?とツッコミたくなる腹だしスタイル。時代を感じます。

・街中に溢れてて、突発にやってくる暴力の気配。
後半の展開に特に関わってくることに。底辺に生きる彼らにはとにかく不意にやってくる。中学生のような子供たちがヤクザ者の手下に入団してきてたり(ちなみにその子供たちは知的障害をもつロウをカツアゲしてた)、団地で急に刺されたり、密売人を街中のスケート男子が襲ったりと、全体的に民度が低く街全体に暴力が溢れてる。

・ラストの電話の演出。グッときた。

今の時代じゃ絶対に撮れない映画だと思います。Amazonでやってるうちに見れてよかった。
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