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白鳥のnetfilmsのレビュー・感想・評価

白鳥(2023年製作の映画)
4.1
 『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』からのあっと驚くようなロアルド・ダールの箱庭的短編第二弾が翌日登場には心底参った。スタンダード・サイズの書き割り形式の紙芝居から一転して今作は、大柄で愚かないじめっ子2人の標的になってしまった小柄で聡明な少年の物語を大人になったルパート・フレンドがカメラ目線で語る。今作は絵画的というよりは奥行きを生かした映画的な作劇になっており、さながら『ムーンライズ・キングダム』の黒眼鏡のボーイスカウトの情けない少年のオマージュにも見える。『ムーンライズ・キングダム』でも見られた双眼鏡EYEは今作でも健在で、自殺願望のある少年の寓話的非喜劇をカメラは90度据え違った画角で大胆にも現しては90度ずつ右回転し取り繕う。ここで見られる列車の到着はウェス・アンダーソンのガジェットの起動と対をなす。ウェス・アンダーソンの夢幻の世界はファンタジー的な幸福な帰着を迎えることが多いが、ここは原作者のロアルド・ダールの箱庭的短編に則り、ひたすらへヴィーな読後感を催す。然し乍らこの波状的4本連続の試みには『アステロイド・シティ』の複数構造以上に度肝抜かれる。
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