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ネズミ捕りの男のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ネズミ捕りの男(2023年製作の映画)
4.2
 40分の『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』から奇跡のようなロアルド・ダール原作による物語が3本。その3本すべてが17分に揃えられ、ウェス・アンダーソンの中に何か明確な時間の流れがあるのだと思うが、心底とち狂っている、というか怖い。またもやスタンダード・サイズの狭い視野の中行われる物語は、新聞社の横が車の修理工場といういかにもウェス・アンダーソン的な街並みで180度後ろへパンすればわらの家がある。新聞社と修理上の間の僅かな隙間を男はやって来て、ネズミと知恵比べをする。要は一休さんのような心地良い頓智比べで、リチャード・アイオアディは語り部となり、カメラ目線で実況中継する。シンメトリ―に切り取られた土管の描写でこれは『ファンタスティック Mr.FOX』かと連想していたら正解で、クライマックスにはアニメーションで切り取られたネズミが登場する。15分くらいまでは男とクロード(ルパート・フレンド)との台詞の応酬が微細なパン移動によってしか行われない(場面転換は別)。男がわらの家に罠を仕掛ける場面も水平パンで、ウェス・アンダーソンはこの空間に360度見事な箱庭的世界を描いているのだ。そしてラストの活劇の場面に初めてリバース・ショットを持って来る辺りの計算も実にお見事と呼ぶしかない。
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