みきちゃ

テイラー・スウィフト:THE ERAS TOURのみきちゃのレビュー・感想・評価

5.0
昨年秋に鑑賞して、こんなにも良すぎたら感想など書けるかッッッッ!(怒) というありがたいお気持ちをもらった。

今回のテイラーの世界ツアー。デビューしてから今までの歌手としての音楽活動歴と、パパラッチが流してきた愛だの恋だの腫れたの惚れたのが世界一多いと思われる私生活ニュースと、SNS上で起こった炎上と、、、そんな数々のあれやこれやを総盛り込みのもりもりにした構成に仕上がっていた。テイラーは、デビューしたときから目立つ子で、話題性に溢れていて、ファンもたくさんいて、ヒット曲連発で、特にファンでなくとも何かしら見聞きせずに日常を過ごすことはないくらいの売れっ子だったから、ファンじゃなかった私も彼女の歩みをきっちり把握できているという存在。みんなのテイラー・スウィフト。流れが変わったのは忘れもしないあのMTVアワードでの授賞スピーチの日。カニエ・ウェストとの10年に及ぶ因縁の始まりでもあった。こんな可哀想なことあるか??ってなったし、全欧米に中継されてるステージで何も言えずただ唖然として涙ぐむしかできなかった、主役であったはずの金髪の若くて美しい女の子。それからはさらにゴシップのネタになり、セレブの女の子たちの人間関係でなんやら揉めてるだとか揉めてないだとか、あの有名シンガーと付き合って分かれて、あの有名俳優と付き合って分かれて、あの有名アイドルと付き合って分かれて、ともはや何人いたのか数えるのも大変な恋愛スキャンダル。でも彼女はシンガー・ソングライター。すべてを歌詞にして歌いはじめた。すべてを糧にして本業の音楽に乗せてグラミー賞常連になり、反論も感情も曲に込めてとにかく休むことなくアグレッシブに戦ってきた。

いよいよ今回こそはテイラー・スウィフトいうブランドもダメージを受けたのでは、歌手キャリアが終わってしまうのでは、と思ったことが何度かあった。初期アルバムの原盤権問題で、自身で作詞作曲した歌を歌えなくなる事態に追い込まれかけたとき。自分で作った歌なのに権利を取られたら全て奪われてしまうことの怖さ。カニエの音声流出で、噓つき蛇オンナ!!!!と酷い非道い言葉の袋叩きにあって鬱っぽくなり引きこもったとき。いつもニュースに彼女の話題があったのに、何も出なくて、何も分からなくて、もう帰って来ないのかと心配した。

同じ女性としては、1ドル裁判も忘れられない。過去に受けたセクハラが表沙汰になり、男の方はセクハラなんかしてないと主張し、テイラーは「そんなこと昔からどこでも普通にあることだよねと黙ったりはしないし、女性だって声を上げて戦えるんだと、セクハラはあってはならないんだと示したいんです」みたいなことを言って、3年ぐらいかけて裁判して、勝訴して、求めた賠償金1ドルを勝ち取ったというお話。お金じゃないのよという話。

書き出すとこんなふうにキリがなくなるから嫌だったんよ……の気持ちはさておき、ここまできたらなんとか頑張って書き終えたい。

テイラーはアルバム10枚くらいは出してると思う。ライブの構成は、各アルバムから世界的大ヒット曲や思い入れがある3曲ほどを取り上げて、当時のプロモーションの世界観彷彿だけどアップデートなかんじで披露していく。アルバムの切り替わりが分かる細切れ構成なんだけど、みんなが見てきたテイラーの歩みという意味ではずーっと繋がっていて、歴史と成長が感じられる作り。

カントリーからポップスへのジャンル転向もあった。ギターを弾いて歌ってたのが、踊るようにもなった。アルバム毎のカラーもある。人として歌手として、修羅場をかいくぐって凄みが増す彼女のアプローチは変化し続けていて、あの頃はまだ清楚な姫系で売ってたなーとか、この頃の彼氏と別れた理由って何と報道されてたんだっけーとか、元カノにこんな風に思われてたとか当人は大ショックだっただろうなーwwww とか、この曲でテイラーは一皮剥けて世間黙らせたんよなーとか、このときアンチのうるさみがピークだったなーとか。テイラー・スウィフト史がどんどんどんどん思い起こされる。

あーこの歌ゆうこりんとカラオケで歌って息切れしたなーとか、それ見てツイツイが笑ってたなーとか、テラハ好きで見てたっけーとか、このMVが公開されるやいなや速攻でYouTubeかぶりつきヘビロテしたなーとか、この頃コロナでステイホームがんばってて新曲しぬほどうれしかったなーとか、いつの間にか自分の過去も続々思い出してきちゃってエモエモになって。

決してベストヒットを揃えただけの構成じゃなかったことに感動。これまでの歌手活動を総括します!とかそんなシンプルなことで満足しなかったテイラー。あー、すごい。

蛇オンナを演出にぶちかましてきたメンタルタフネスもやばかった。どんな擦り傷も大事故も瀕死の重傷もプラスにもってくことしかできない女。

スクリーンの中の客席のスウィフティーズたちが、年齢も服装もバラッバラで幅広すぎるんだけど、自分が一番好きな時代のテイラーの服装やメイクを真似て2023年に集っているからで、でもその格好のテイラーではない時代の歌もめちゃくちゃ歌えてて、大変幸せな一体感に包まれていた。テイラー自身、パフォーマンスにおける衣装をめちゃくちゃ重要視しているから、海外アーティストには珍しいお着替えの嵐で最高だった。衣装のことだけでもまだまだ書けるがもう割愛。

声出し上映で後部席を選んだのは大正解。スクリーンのこちら側、我々の右隣には老夫婦がいて、手を繋いで仲良くノッてた。我々の左隣にはきれいな若い男の子が二人いて、両名が40曲はあったであろう歌詞たちをほぼ覚えてがっつり歌っていた。前方では多国籍ガールズのノリがよく、振付けを真似たりしてて、私もやるかとなったら横一列一緒になってやりだして、なんとも楽しかった。ちゃんとライブ会場だった。

上映回数がすくなかったことには文句を言いたい。できるだけ音響の良いスクリーンで鑑賞したかったが距離的にも時間的にも合わなくて、普通のスクリーン鑑賞となったことが唯一の心残り。

何があっても負けなくて、スキャンダルは全て乗り越えて、ゴシップにまみれたのに汚れたビッチなイメージなどまったく残っていなくて、エンタメとして消費されまくってきたはずなのにボロボロにもならなければ減りもしない、いつだって今が全盛期な彼女をずっと見ていきたい。

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ここまで読んでこられた テイラー・スウィフトとか誰やねん知らんわー となっておられる方には、元カレ陣がどんな方々なのかググることをおすすめしたい。MCU俳優が3人はいますし。えっ、名曲ウィーアーネバーエバーエバ〜〜♪の曲ってあの彼のおかげでうまれたん!とか、映画好きでもたのしめるエピソードがいくつもあるので!
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