どういう経緯で立ち上がったのかよく分からない映画。パブリシティの垢抜けなさ(推薦コメントの人選が節操なさ過ぎる)、『オールド・ボーイ』のパチモンみたいなタイトルなど怪しい雰囲気漂うが、一級のスタッフキャストはきっちり仕事をしている。人命を弄ぶ頭脳ゲーム――『DEATH NOTE』のセルフリメイクか。柳島克己のカメラで捉えられた一見清涼な沖縄は、血の色と親和性がある。喉元過ぎれば何も残らない安いゴラク型ではあるが、細部で魅せる気楽なプロピクとして楽しんだ。殺意を肯定しながら同時に糾弾もする。作り手の確たる倫理がなければ難しい題材だが危なげない。ただ、無責任な大人社会vs青い子供論理が持ちうる切実さがサイコの登場で雲散霧消したのはかなり白けた。生き残るため非情になる必要があったのではなく、先天的に異常でしたは筋が通らなくないか。貧困といった外的要因に追い詰められ殺人に手を出し逃避行する『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』のような境地には至っていないし、社会に対する批評としても中途半端。そもそもあの二人はどこで寝泊りしていたのか。風呂入れよ歯磨けよ顔洗えよ宿題やれよ風邪ひくなよといった点がかなり気になった。最後に立ちはだかるのは父母である辺りに保守性を感じさせはする(若手はこういう結末にしない)が、私としては平成三部作においてガメラが男性性を背負っていたのに対し、敵怪獣が母性原理に基づいていたことを思い出した。ラスボスが母親。
