ユーライ

バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト デジタルリマスター版のユーライのレビュー・感想・評価

4.8
暴力刑事ものらしく善悪の境界を揺るがさなければ、タフな生き様で魅了もしない。野獣刑事……いや、悪徳刑事(デカ)と呼ぶのが相応しい。当然のようにヤクをキめ、違法賭博に横暴捜査。挙げ句の果てには無免許運転に因縁付けて、娘さんの痴態をオカズにシコシコ。家へ帰れば冷え切った家庭。ひたすらに荒んだセコい生活を執拗にカメラは追いかける。終始苦み走るこのオッサンは何が楽しいんだよと解せないまま観ていると、最後の最後で嗚咽しながら心情を吐露する。「俺だって間違っているのは分かっている。でも、どうしようもないんだ」。土壇場で良心を発揮してもとっくに遅い。誰にも看取られやしない。不細工な遅れてきたニューシネマ。教会で強姦事件が起きるのデジャブだと思ったらアレだ、『濡れた荒野を走れ』だ。暴力刑事もの、何でこんな打率高いんだろうな。
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