ご機嫌な黄色

オールド・フォックス 11歳の選択のご機嫌な黄色のレビュー・感想・評価

4.0
他人を思いやる人は負け組だと、
他人なんか知るかとのし上がってきたオールドフォックスは
バブルに翻弄されながらも夢に喰らいつく少年を気に掛け処世術を伝える

子どもが世の本音に気付く時、それを否定せずだからこう生きろと、教育上は正しくない本当のことを言ってくれる親以外の存在はとても大事
少年は両極端な父と老狐狸との間で成長していく

作品は情ある負け組を肯定するわけでもなく、
不公平な地に雨を降らせる
濡れたアスファルトが光るさまはノスタルジックである
内装や家具小道具、90年のあの頃の生活感

どこかお互いドライな庶民に対して
老狐狸だけは呼気の温度湿度を感じるような距離間で、
己の過去と面前の少年を見据える
冷酷さも雨に溶けては悪人に成りきれない
アキオ・チェンの顔が(私には他の役を知らない故に先行イメージがなく)人情派寄りに見えるのもキャスティングの妙だろう
目も口元も優しく笑う
他人を思いやっている人をその背だけで感じ分けられる彼は誰よりも人の心に敏感なのである
誰よりも気遣いの人である
寄り添うのか、利用するのか、知ったことかと嘯くのか

父子共通の夢に懸命になればなるほど、二人の心が離れてしまっていくのはありがちな切なさであるが、
リャオジェ役のバイ・ルンインの芝居には安さがなく、
痺れる思いがした
瑞々しさと胆力を備え、
責任を負う自信に満ちていて
無邪気でいられないが荒みもしない一瞬の少年の特権だった
唐突なラストも、着地点としては観客の望んだものではないかと思う
少なくとも私は良かったなと思えて、
良い映画だったなと感じるものだった

惜しむらくは父子の夢の動機付けを共感か納得を得る形で見せてもらえなかったこと
父は美容師修行するでもなく、オーナーになるだけ??よくわからん
そこが弱いとどうにも一生懸命には観賞出来なかった

けれど、
美人のお姉さんがマジで美人のお姉さんでゲロマブでしたのでプラマイはゼロ
そして、
思いやりの心あればサックス夜に吹くか?ってのも全体の選曲センスでプラマイゼロ
ご機嫌な黄色

ご機嫌な黄色