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青春18×2 君へと続く道のnetfilmsのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
3.3
 なにわ男子の道枝くん見たさで六本木の舞台挨拶に駆け付けたが、両隣は道枝くんファンで、この日会場を訪れていたほとんどの客がおそらく道枝くんファンだったのではないか。映画上映前なので作品の詳細には触れることが出来ず、専らゲームなどをしながら無難なトークだったのだが映画が始まると、台北とは微妙に違う台南の景色が懐かしい。タイトルの『青春18×2』とはいったい何かと思ったがなるほどそういうことかと合点が行った。主人公の現在の年齢が36歳なのだ。カラオケ店でバイトする高校生のジミー(シュー・グァンハン)が日本から来たバックパッカーのアミ(清原果耶)と出会たのが18歳なら、ジミーがアミに会いたいと初めて日本を訪れたのは36歳で、ゲーム・プログラマーとしての夢を背負いながら、やがて会社を立ち上げ、明らかに彼が主体の会社なのだが、役員会で彼は退陣を迫られてしまう。36歳といえば普通は社会の中でもがき苦しむ年代であって、その年齢で株式会社の社長に就任しながら、のちに追い出されると言ってもあまりリアリティはない。ジミーは信じられないことに36歳になってもなお、18歳の頃に出会ったアミとの一か月余りの想いが忘れられない。その辺りを許容出来るかによって、今作の恋愛リアリティは随分変わって来るだろう。

 ストレート同士の異性愛といえば、一番のトレンドはすれ違いになる。心、距離、時間のすれ違いが一番わかり易いし、一番観客の心にも響くとどの会社もリサーチしているはずだ。然しながら直近のここ数作の日本映画におけるすれ違いが、応答しない手紙や、旅先から書かれたあまりにもエモいラブレターなのはどういうことなのか?例を挙げるとすれば、川村元気原作の『四月になれば彼女は』も、北野武のラノベ的な恋愛小説を原作とした『アナログ』も、今作同様に愛する人が突然、主人公の元からいなくなる悲しみを描いていた。今作の原作であるジミー・ライの『青春 18×2 日本慢車流浪記』は未読だが、おそらくそこには2人が台湾での一ヶ月での滞在中に岩井俊二の『Love Letter』を観たことがあまりにも貴重な体験となることからもわかるように、川村元気もビートたけしも今作もまた岩井俊二の『Love Letter』の応答しない手紙の世界観をメタ的に踏襲しようとする同じ構造の物語なのである。それに気付いた時点で今作の結末も殆ど予想通りで、日本に来た途端に主人公にびっくりするような事実が舞い込んで来るという後半の大どんでん返し的な展開も、『四月になれば彼女は』や『アナログ』や『Love Letter』を観た者には容易に想像が付く。今作の公開時期が分が悪いように思う理由はもう一つあり、直近で『パスト ライブス/再会』という非常に質の高い恋愛劇を観てしまうと、どうしても点が辛くなる。もっと言うと同じ監督作の『余命十年』を観ていればある程度展開は読める。

 さて問題の道枝くんだが、中盤主人公にウザ絡みする旅行客という別に物語にあまり関与せず、別に道枝くんでなくても成立しそうなキャラクターに収まっており、それはそれは物足りない印象だ。黒木華も別にあのキャラクターを演じた必然性はどこにもなく、ブランディングに長けた藤井道人のプロデューサー的な手腕に良い意味でしてやられた感も強い。
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