金宮さん

シュリ デジタル・リマスターの金宮さんのレビュー・感想・評価

3.5
出自がゆえの悲恋とその葛藤をとにかくエモーショナルに。こんなの切なすぎて泣いちゃうって。確かに「韓流の原点にして頂点」というトレーラーのあおりも頷けるが、その過剰ともいえるドラマチックはどちらかというと韓国映画っていうより韓国ドラマへの影響が大きいのかなと思ったりもする。どっちも好きなんですが。

大迫力の訓練シーンから街中の追いかけっこまで緊迫感抜群で目が離せない。ただやっぱり、臨場感を意識しすぎたであろう手ブレ演出の結果いまどうなってるのか訳わかんないことになってたり、どうしても流石に撃ちすぎだろと思うほどの市街地銃撃戦はかなり粗っぽいのは否めない。ただこれらも、大漫画家の連載当初って絵柄荒いよね的な初期衝動として好意的に感じられる。そのくらいパワーがある。

むしろ気になったのはIMF経済危機の真っ只中のはずなのに、熱帯魚・巨大スーパー・演劇鑑賞など随所に余裕が感じられるモチーフが多いことへの違和感。同時期の『ペパーミント・キャンディー』が軍事政権以降も結局は資本の理論というかたちで不条理は続いてたよねと描いていたのと対照的であり、当時の世相をリアルに表現していたのかな?と疑問符はついてしまう。

今作のように現実の対外勢力を明確に「悪」として描く作品がちょこちょこあるのも韓国映画の特徴だと認識しつつ、一方でイ・チャンドン作品のような内省的な作品も確固として存在するところが興味深い。個人的な好みとしてはどうしても後者にはなってしまうので、同時期に南北の分断をテーマとした『JSA』や今作のメインキャストが揃い踏んでいる『グリーンフィッシュ』への興味がますます湧いた。
金宮さん

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