このレビューはネタバレを含みます
実際の事件をモデルにしたという本作。
気にはなっていたがなかなかタイミングが合わず、ようやく鑑賞することができた。
結果、評判通りとてつもない作品だった。
だけど、もう観たいとは思えない。
でも、多分またどこかで観ると思う。
とにもかくにも、河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉と、出演者の鬼気迫る演技に圧倒される。河合優実は杏の救われていく様と、再び堕ちていく様を見事に演じていた。特に、自死を選ぶ直前はセリフも音楽もない中、淡々と希望がほつれていく姿が映し出される。観ていて、とても恐ろしくなる姿だった。そしてとてつもなく、哀しい。
母親を演じた河井青葉の恐ろしいまでのクズっぷりも印象深い。いや、これでカットかかったら普通に喋って笑顔で接してんだよな、とちょっと裏側を想像すると、役者ってやっぱスゲーやと改めて感心する。同時に、やっぱりちょっと恐ろしくもある。
この、実話をもとにしているからなのか、淡々と展開していく物語をより冷静に、そして冷徹にしているのが、とにかく抑えられた演出と視点（カメラアングル）だと思う。監督が描き足さないようにしたというこの物語は、起こる出来事の凄惨さに比べ、とにかく冷静に冷徹に起こっていることを映し出す。大きく動くアングルもなければ、格好つけたショットもなく奇をてらったものもない。劇伴もとても抑え気味で、そもそも入っている箇所も少なかったんじゃないだろうか。それほど、この映画が描く杏の物語は静かでとても残酷だ。
